平成17年度 行政書士試験


択一式等

法令問題

[問題1~問題40]

問1

裁判に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア、裁判所は、法令適用の前提となる事実の存否が確定できない場合であっても、裁判を拒否することはできない。
イ、最高裁判所は、憲法その他法令の解釈適用に関して、意見が前に最高裁判所のした裁判または大審院のした裁判と異なるときには、大法廷で裁判を行わなければならない。
ウ、ある事件について刑事裁判と民事裁判が行われる場合には、それぞれの裁判において当該事件に関して異なる事実認定がなされることがある。
エ、裁判は法を基準として行われるが、調停などの裁判以外の紛争解決方法においては、法の基準によらずに紛争の解決を行うことができる。
オ、上告審の裁判は、法律上の問題を審理する法律審であることから、上告審の裁判において事実認定が問題となることはない。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

答え.2

問2

情報と法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 電子署名法※1は、電子署名に、自然人の本人確認だけではなく、会社などの法人の存在証明としての効力を認めるものである。
  2. 刑法における窃盗罪が成立するためには、財物の占有が奪われることが必要であり、情報が記録されている媒体を持ちさることなく情報だけを違法に収得しても、財物占有が奪われることはないから、窃盗罪は成立しない。
  3. 著作権、特許権などの情報に関する知的所有権が財産として保護されるためには、官公署に登録されることが必要であり、登録されていない著作権、特許権は第三者に対抗することはできない。
  4. インターネット上の情報について、憲法上、表現の自由は保障されているが、通信の秘密の保護の対象となることはない。
  5. 平成17年4月に施行された個人情報保護法※2は、情報公開法※3とは異なり、電子計算機により処理された個人情報についてもっぱら適用され、手書きの個人情報について適用されることはない。

(注)
※1、電子署名及び認証業務に関する法律
※2、個人情報の保護に関する法律
※3、行政機関の保有する情報の公開に関する法律。

答え.2

問3

次の記述は、日本国憲法の条文を基礎としているが、本来の条文にある重要な要素が欠けているなど、変更されているものが含まれている。選択肢1~5のうち、本来の条文に照らして正しいものはどれか。

  1. 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
  2. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  3. 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命、自由若しくは財産を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
  4. 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その補償を求めることができる。
  5. 国民、天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

答え.1

問4

次の文章は、ある最高裁判決の補足意見の一節である。選択肢1~5のうち、この補足意見とは考え方の異なる見解はどれか。
 選挙運動においては各候補者のもつ政治的意見が選挙人に対して自由に提示されなければならないのではあるが、それは、あらゆる言論が必要最少限度の制約のもとに自由に競いあう場ではなく、各候補者は選挙の公正を確保するために定められたルールに従って運動するものと考えるべきである。法の定めたルールを各候補者が守ることによって公正な選挙が行なわれるのであり、そこでは合理的なルールの設けられることが予定されている。このルールの内容をどのようなものとするかについては立法政策に委ねられている範囲が広く、それに対しては必要最少限度の制約のみが許容されるという合憲のための厳格な基準は適用されないと考える。
(最判昭和56年7月21日刑集35巻5号577頁以下)

  1. 憲法47条は、国会議員の選挙に関する事項は法律で定めることとしているが、これは、選挙運動については自由よりも公正の観点からルールを定める必要があり、そのために国会の立法裁量の余地が広い、という趣旨を含んでいると考えられる。
  2. 国会は、選挙区の定め方、投票の方法、日本における選挙の実態など諸般の事情を考慮して選挙運動のルールを定めうるのであり、これが合理的とは考えられないような特段の事情のない限り、国会の定めるルールは各候補者の守るべきものとして尊重されなければならない。
  3. 公職選挙法による戸別訪問の禁止は、表現の自由を制限するものと考えれば、これを合憲とするために要求される厳格な基準に合致するとはいえないが、選挙の公正を確保するためのルールであると考えられるので、そこに一定の合理的な理由が見出される限りは、国会の立法裁量を尊重すべきであり、合憲的な規制であると考えられる。
  4. 戸別訪問には、選挙人の生活の平穏を害し、買収・利害誘導等の温床になりやすいなどの弊害が伴うことは否定できない一方、これを禁止する公職選挙法の規定は、自由な意見表明そのものの制約を目的とするものではなく、意見表明の手段方法がもたらす弊害の防止を目的としているにすぎないから、厳格な基準は適用されず合憲である。
  5. もとより戸別訪問の禁止が、選挙の公正を確保するための立法政策として妥当であるかどうかについては、考慮の余地があり、実際、戸別訪問の禁止を原則として撤廃すべしとする意見も強いが、これは、その禁止が憲法に反するかどうかとは別問題である。

答え.4

問5

次の衆参両院の議事運営に関する記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 日本国憲法は、議事運営につき、戦前の議院法に相当する国会法の制定を予定しているが、法律の定めていない細則については、各議院の議院規則にゆだねられている。
  2. 政府委員の制度は、日本国憲法の下では、国会法上の存在にとどまり憲法の予定するところではなかったが、戦前からの伝統を受け継ぎ今日まで維持されている。
  3. 日本国憲法は「両議院は、国民より提出された請願書を受けることができる。」と定めるにとどまるが、いわゆる請願権を憲法上の権利と解するのが通説である。
  4. 日本国憲法は「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」とするが、各議院の議決で付託され閉会中に審査した案件は、後会に継続するのが慣例である。
  5. 衆参両院の会期は同じであり、衆議院の側の事情によって行われた閉会、会期の延長は、参議院の活動能力をも左右することになる。

答え.5

問6

日本国憲法が定める身分保障に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. いわゆる議員特権の一つとして、両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受けるものとされている。
  2. 皇室財産については、憲法上、すべて国に属するものと定められ、皇室の費用も、すべて予算に計上して国会の議決を経なければならないとされている。
  3. 裁判官の身分保障に関連して、下級裁判所の裁判官の任期は10年であり、仮に再任されたとしても、法律の定める年齢に達したときには退官するものとされている。
  4. 裁判官の身分保障に関連して、下級裁判所の裁判官は、憲法上、すべて定期に相当額の報酬を受け、在任中、これを減額することができないと定められている。
  5. 公務員の身分保障の一環として、官吏は、憲法上、すべて定期に相当額の報酬を受けるものと定められている。

答え.5

問7

次の事項に関連して、日本国憲法および公職選挙法が予定する裁判作用とその担い手の組合せとして、正しいものはどれか。

A、国会議員の資格をめぐる裁判
B、国会議員の選挙の効力をめぐる裁判

a、議院
b、国会
c、裁判所

  1. A-a B-b
  2. A-b B-c
  3. A-c B-a
  4. A-a B-c
  5. A-b B-a

答え.4

問8

次の文章は、国の行政機関の長が命令等を発する権限について規定している「国家行政組織法」の条文である。(ア)~(オ)にあてはまる語として正しいものの組合せはどれか。
第12条 各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、または法律若しくは政令の特別の(ア)に基づいて、それぞれその機関の命令として(イ)を発することができる。
第14条 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、(ウ)を発することができる。
2、各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、(エ)又は(オ)を発することができる。

  ア   イ   ウ   エ   オ

  1. 委任 規則 告示 訓令 通達
  2. 授権 政令 通達 告示 訓令
  3. 委任 訓令 布告 通達 規則
  4. 委任 省令 告示 訓令 通達
  5. 授権 省令 通達 訓令 告示

答え.4

問9

行政指導に関する次の記述のうち、妥当なものはいくつあるか。
ア、行政指導は相手方私人の任意的協力を求めるもので、法令や行政処分のように法的拘束力を有するものではなく、宅地開発指導要綱のように書面で正式に公示される形式をとった場合や、指導に従わなかった場合には相手方の氏名が公表されることが条例によって定められている場合においても、法的拘束力がないということに変わりはない。
イ、規制的な行政指導によって、私人が事実上の損害を受けた場合には国家賠償請求訴訟によってその損害を求償することができる。これに対し、受益的な行政指導の場合においては、強制の要素が法律上のみならず事実上もないのであるから、行政指導に基づき損害が発生した場合には、民法上の不法行為責任を問うことはできても、国家賠償責任を問うことはできない。
ウ、行政機関が行政手続法による規律をうける行政指導を行うことができるのは、行政機関が行政処分権限を法律上有しており、処分に代替して事前に行政指導をする場合に限られる。これに対し、組織法上の権限のみに基づいて行われる事実上の行政指導については、行政手続法上の規定は適用されない。
エ、行政機関が同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し同種の行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項を定め、かつ行政上特別の支障のない限り、これを公表しなければならない。
オ、行政指導は、その内容および責任者を明確にするため書面で行うことを原則とすべきであり、書面によることができない相当な理由がある場合を除いて、口頭による行政指導をすることはできないという行政手続法の定めがある。これに対し、一部の行政手続条例では、行政手続法の規定とは異なり、口頭の行政指導を許容する規定を置いている場合がある。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

答え.2

問10

申請についての行政手続法の定めに関する次の記述のうち、妥当なものはいくつあるか。
ア、補助金の交付申請は、法令に基づかない申請であっても、行政手続法上の申請とみなされる。
イ、行政手続法上の申請のうち、行政庁が諾否の応答を義務づけられるのは、許可あるいは認可を求めるもののみに限られる。
ウ、許認可の申請にあたっては、申請者には申請権があり、行政庁には申請に対する審査・応答義務があるので、形式要件に適合している限り、申請書類の返戻は許されない。
エ、行政庁は、申請がその事務所に到達したときは、遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならない。
オ、申請に対し許認可を与える場合、それは、申請通りの内容を行政庁として認めることを意味しているので条件を付すことは許されない。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

答え.2

問11

行政手続法に規定されている聴聞手続に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 聴聞手続は行政庁の通知によって開始される。通知文書には、予定される不利益処分の内容、聴聞期日、場所等が必ず記載されていなければならない。
  2. 聴聞は行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。この場合に、行政庁が指名しうる職員の範囲については特に明文の制限はないので、その実質的な当否はともかく、当該不利益処分に関与した担当者を主宰者として指名することも不可能ではない。
  3. 聴聞の期日における審理は非公開が原則である。しかし、行政庁が相当と認めるときは、その裁量により公開して行うことができる。
  4. 聴聞手続の主宰者は、期日ごとに聴聞の審理の経過を記載した聴聞調書を作成し、また聴聞終結後は報告書を作成する。しかし、これらの文書には当事者の主張を整理して記載することが求められているだけで、主宰者の意見を記載することは許されていない。
  5. 行政庁は不利益処分の決定をするときは、聴聞調書の内容等を十分に参酌しなければならない。これは単にそれを参考に供するということだけを意味するのではなく、行政庁が聴聞調書に掲げられていない事実に基づいて判断することは原則として許されないことを意味する。

答え.4

問12

行政代執行法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 行政代執行法の定める手続的要件は、憲法上の要請と解されているので、個別の法律で簡易代執行を認めることはできない。
  2. 行政代執行法では、代執行の前提となる命令等の行政処分がすでに文書で告知されているので、戒告を改めて文書で行う必要はない。
  3. 行政代執行では、緊急の必要性が認められ正規の手続をとる暇がない場合には、代執行令書による通知手続を経ないで代執行をすることができる。
  4. 行政代執行は、義務者の義務不履行をその要件として、その意に反して行われるので、行政代執行手続においても、行政手続法上の不利益処分の規定が適用される。
  5. 行政代執行法は、法令違反の是正が目的とされているから、義務の不履行を放置することが著しく公益に反しない場合であっても、代執行が可能である。

答え.3

問13

国家賠償法に関する次の記述のうち、判例に照らし妥当でないものはいくつあるか。
ア、国家賠償法1条に定める公共団体の責任とは、公共団体自体の責任を問うものではなく、加害公務員の責任を代位するといういわゆる代位責任であるから、具体的に損害を与えた加害公務員の特定が常に必要とされる。
イ、国家賠償法における公権力行使の概念は非常に広く、法的行為のみならず、警察官による有形力の行使等の事実行為をも対象とするが、教育活動や公共施設管理などのサービス行政に関わる行為など民法709条の不法行為責任を問うことができる場合については、国家賠償法に基づく責任を問うことはできない。
ウ、職務を行うについてという要件の範囲は非常に広く、勤務時間外に行われた、公共団体にとってはおよそ直接監督することができない、職務とは関わりのない行為でも、それが制服を着用していたり、公務であることを騙ったりして、外見上職務であるように見えれば、国家賠償法上の職務関連行為として認定されることがある。
エ、国家賠償法1条の責任は、国・公共団体の客観的な責任を問うものであり、損害が発生したことについて、行為者たる公務員本人の故意過失が認められない場合であっても、損害の発生が国・公共団体の作為・不作為に起因するものである場合には、賠償責任が成立することが最高裁判例により認められている。
オ、国・公共団体の機関は、規制権限の行使・不行使に関する判断をする裁量的な権限を一般的に有しているが、国民の生命・身体に直接の危害が発生するおそれがある場合には、規制権限の不行使が国家賠償法上責任あるものとして認められる場合がある。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

答え.3

問14

次のア~オの記述で、行政不服審査法の不服申立ての対象とならないものが二つある。その組合せとして、正しいものはどれか。
ア、都市計画法に基づく開発許可処分
イ、外国人の出入国に関する処分
ウ、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有する事実行為
エ、建築基準法上の建築確認処分
オ、国税犯則事件に関する法令に基づき、国税庁長官が行う処分

  1. ア・ウ
  2. ア・オ
  3. イ・エ
  4. イ・オ
  5. ウ・オ

答え.4

問15

次の文章の空欄A~Dに入る適切な文言の組合せとして、妥当なものはどれか。
「不作為に対する不服申立ては、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らの判断も示さない場合に行政庁がすみやかに判断を下すよう督促し、事務処理の促進を求めるものであるから、[ A ]のほうが[ B ]より実効性がないということは、必ずしもいえない。むしろ不作為の不服申立ては、[ C ]自体に直接行ったほうが、迅速、適切な措置を期待できる場合もあるので、本法は、不作為に対する不服申立てに関しては[ D ]をとった。」
(出典 田中館照橘ほか「判列コンメンタール行政不服審査法」より)

   A     B     C     D

  1. 異議申立て 審査請求  上級庁 自由選択主義
  2. 審査請求  再審査請求 上級庁 審査請求中心主義
  3. 審査請求  再審査請求 処分庁 自由選択主義
  4. 異議申立て 審査請求  処分庁 自由選択主義
  5. 審査請求  再審査請求 処分庁 審査請求中心主義

答え.4

問16

平成16年の行政事件訴訟法改正では、行政訴訟における国民の救済範囲の拡大と国民にとっての利用しやすさの増進がはかられた。次の記述のうち、改正法でなお実現されなかったものはどれか。

  1. 従来、抗告訴訟における被告は行政庁とされていたが、改正後は、国家賠償法と同様に、国または公共団体を被告とすることになった。
  2. 従来、無名抗告訴訟の一種として位置づけられてきた義務付け訴訟や差止訴訟が、改正後は法定抗告訴訟とされたのにともない、仮の義務付けおよび仮の差止めの制度が設けられた。
  3. 従来、きわめて厳格であった「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」という執行停止の要件が、「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」とされ、改正前に比べ緩和された。
  4. 従来、原告適格の要件としての「法律上の利益」が厳格に解釈されていたが、当該法令と目的を共通にする関係法令も参酌すべきことなどとされ、その拡大がはかられた。
  5. 従来、厳格に解釈されてきた取消訴訟における処分性について、具体的な効果など諸事情を総合的に考慮し判断すべきとの解釈規定が加えられ、その拡大がはかられた。

答え.5

問17 改題

普通地方公共団体の議会(以下、「地方議会」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 地方議会の議員の職務は、戦前は報酬なしの名誉職とされていたが、現在は、条例の定めにより、報酬および期末手当の支給と費用弁償を受けることができる。
  2. 地方議会の議員定数は条例で定めるが、その定数は各地方自治体が最も適正と考える人数を定めることが可能であり、人口規模に応じた上限はない。
  3. 地方議会の議員は、衆議院議員・参議院議員を兼職することができず、また他の地方公共団体の議員や、地方公共団体の常勤ないし短時間勤務の職員を兼ねることも禁止されている。
  4. 地方自治法は、町村に限ってではあるが、議会をおかずに、これに代えて、条例により選挙権者による総会を設置することを認めている。
  5. 地方自治法の規定する議会の議決事項は限定列挙と解されているため、地方自治体が条例によって、自治事務につき議会の議決事項を追加することは認められていない。

答え.5

問18

地方公共団体における監査制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 監査委員の権限は、地方公共団体の事務のうち、いわゆる自治事務を対象とするものであって、法律に特別の定めがない限り、法定受託事務には及ばない。
  2. 監査委員の権限は、地方公共団体の財務に関する事務執行およびその経営に関する事業の管理などいわゆる「財務監査」に限られ、一般行政事務に関するいわゆる「事務監査」にまで及ぶわけではない。
  3. 監査委員には複数の委員が選任されるが、他の行政委員会のようにその職務を合議機関として執行するのではなく、各監査委員が独任機関として、独立して権限を行使するものとされている。
  4. いわゆる外部監査制度の導入により、地方公共団体は、公認会計士、弁護士など、外部の一定の資格ある者(外部監査人)との外部監査契約に基づいて、その者の監査を受ける場合は、従来の監査委員をおかないことができることになった。
  5. 住民は、有権者の50分の1の連署をもって監査委員に事務の監査を求める直接請求をした場合で、監査委員の監査結果に不服があるときは、さらに裁判所に対し住民訴訟を提起することができる。

答え.3

問19 改題

地方自治法上の「公の施設」に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア、公の施設とは、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供する施設を指し、法令に特別の定めのあるものを除いて、その設置、管理については、かならず条例の根拠を要する。
イ、公の施設は、相手方自治体との協議が整いさえすれば、当該施設を設置・管理する自治体の区域外であっても、これを設置することができる。
ウ、自治体は、公の施設のうち条例で定める特に重要なものについてこれを廃止し、または特定の者に長期の独占的な使用を認めようとするときは、市町村にあっては都道府県知事の、都道府県にあっては総務大臣の認可を受けなければならない。
エ、自治体は、公の施設の設置目的を効果的に達成するために必要があると認めるときには、自ら当該施設を管理するのではなく、条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該自治体が指定する者(指定管理者)に、その管理を行わせることができる。
オ、自治体の長がした公の施設を利用する権利に関する処分に不服がある者は、市町村長がした処分については都道府県知事に、都道府県知事のした処分については総務大臣に審査請求をすることができる。

  1. 一つ 
  2. 二つ 
  3. 三つ 
  4. 四つ 
  5. 五つ

答え.2

問24

制限行為能力制度に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア、自然人ばかりでなく法人も、成年後見人になることができるが、株式会社等の営利法人は、成年後見人になることはできない。
イ、制限行為能力を理由に法律行為が取り消された場合に、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
ウ、本人以外の者の請求によって保佐開始の審判をするためには、本人の同意が必要である。
エ、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者について、本人、配偶者、4親等内の親族は、補助開始の審判を請求することはできるが、後見人や保佐人は、これをすることはできない。
オ、補助人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、さらに補助人を選任することができる。

  1. 一つ 
  2. 二つ 
  3. 三つ 
  4. 四つ 
  5. 五つ

答え.2

問25

不動産と登記に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし妥当なものはどれか。

  1. Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却した後、Bが甲土地をCに売却したが、いまだに登記がAにある場合に、Bは、甲土地に対する所有権を喪失しているので、Aに対して移転登記を請求することはできない。
  2. Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却した後、Aが重ねて甲土地を背信的悪意者Cに売却し、さらにCが甲土地を悪意者Dに売却した場合に、第一買主Bは、背信的悪意者Cからの転得者であるDに対して登記をしていなくても所有権の取得を対抗できる。
  3. Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却し、Bは、その後10年以上にわたり占有を継続して現在に至っているが、Bが占有を開始してから5年が経過したときにAが甲土地をCに売却した場合に、Bは、Cに対して登記をしなくては時効による所有権の取得を対抗することはできない。
  4. Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却したが、同売買契約が解除され、その後に、甲土地がBからCに売却された場合に、Aは、Cに対して、Cの善意悪意を問わず、登記をしなくては所有権の復帰を対抗することはできない。
  5. Aの所有する甲土地につきAがBに対して遺贈する旨の遺言をして死亡した後、Aの唯一の相続人Cの債権者DがCを代位してC名義の所有権取得登記を行い、甲土地を差し押さえた場合に、Bは、Dに対して登記をしていなくても遺贈による所有権の取得を対抗できる。

答え.4

問26

次のア~オのうち、Aの所有するそれぞれの物について、Bが即時取得(民法192条)によりその所有権を取得できる可能性がある場合は、いくつあるか。
ア、Aがその所有する建物をCに賃貸していたところ、Cがその建物を自己の所有する建物としてBに売却した場合
イ、Aの所有する山林に生育する立木について、Bがその山林および立木を自己の所有するものであると誤信して、その立木を伐採した場合
ウ、成年被後見人Aは、その所有するパソコンをBに売却したが、Bは、Aが成年被後見人である事実について善意・無過失であった場合
エ、Aの所有する自転車をCが借りた後に駅前駐輪場に停めていたところ、Bがその自転車を自己の自転車と誤信して、その自転車の使用を継続した場合
オ、Aの所有する宝石をCが盗み出し、CがこれをBに売却したが、Bは、その宝石が盗品である事実について善意・無過失であった場合

  1. 一つ 
  2. 二つ 
  3. 三つ 
  4. 四つ 
  5. 五つ

答え.1

問27

債権者代位権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当でないものの組合せはどれか。
ア、著名な陶芸家の真作とされた陶器がA→B→Cと順次売却されたが、後にこれが贋作と判明した場合において、無資力であるBがその意思表示に要素の錯誤があることを認めているときは、Bみずから当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、Cは、Bに対する売買代金返還請求権を保全するために、Bの意思表示の錯誤による無効を主張して、BのAに対する売買代金返還請求権を代位行使することができる。
イ、債権者Aは、Bに対する金銭債権を保全するためにBのCに対する動産の引渡請求権を代位行使するにあたり、Cに対して、その動産をBに引渡すことを請求することはできるが、直接自己に引渡すことを請求することはできない。
ウ、不動産がA→B→Cと順次売却された場合において、それらの所有権移転登記が未了の間に、Dが原因証書等を偽造して、同一不動産につきA→Dの所有権移転登記を経由してしまったときは、Cは、Bの債権者として、BがAに代位してDに行使することができる所有権移転登記の抹消請求権を代位行使することができる。
エ、AはBから同人の所有する建物を賃借する契約を締結したが、その建物の引渡しが行われていない状態のもとでそれをCが権原なく占有してしまった場合において、Aが、自己の賃借権を保全するためにBに代位して、Cに対して建物の明渡しを請求するときは、Aは、建物を直接自己へ引き渡すことを請求することができる。
オ、自動車事故の被害者Aは、加害者Bに対する損害賠償債権を保全するために、Bの資力がその債務を弁済するに十分であるか否かにかかわらず、Bが保険会社との間で締結していた自動車対人賠償責任保険契約に基づく保険金請求権を代位行使することができる。

  1. ア・ウ 
  2. ア・エ 
  3. イ・エ 
  4. イ・オ 
  5. ウ・オ

答え.4

問28

贈与者Aと受贈者Bとの関係に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。

  1. 未登記の建物を書面によらず贈与した場合において、AがBにその建物を引き渡したときは、Aはその贈与契約を取り消すことができない。
  2. 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、AがBにその建物を引き渡したときは、所有権移転登記が未了であっても、Aはその贈与契約を取り消すことができない。
  3. 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、AからBにその建物の引渡しが行われていないときであっても、所有権移転登記がなされていれば、Aはその贈与契約を取り消すことができない。
  4. 負担付贈与においてBがその負担である義務の履行を怠るときは、Aは契約の解除をすることができる。
  5. Bに対する定期の給付を目的とする贈与であらかじめ期間の定めがあるものは、Aが死亡しても、その期間内は効力を失うことはない。

答え.5

問29

遺留分減殺請求権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当でないものはどれか。

  1. 遺留分減殺請求権は、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位権の目的とすることができない。
  2. 遺留分減殺請求権の行使は、受遺者または受贈者に対する意思表示によってすれば足り、必ずしも裁判上の請求による必要はなく、いったんその意思表示がなされた以上、法律上当然に減殺の効力を生じる。
  3. 被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合において、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれる。
  4. 相続人が被相続人から贈与された金銭をいわゆる特別受益として遺留分算定の基礎となる財産の価額に加える場合には、贈与の時の金額を相続開始のときの貨幣価値に換算した価額をもって評価するべきである。
  5. 遺言者の財産全部についての包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合には、遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有すると解される。

答え.5

問32 改題

株式会社の設立に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア、定款に発起人として署名をしていない場合であっても、株式募集の文書において賛同者として氏名を掲げることを承諾した者は、発起人と同一の責任を負う。
イ、発起人が会社の成立を条件として成立後の会社のために一定の営業用の財産を譲り受ける契約をする場合には、譲渡の対象となる財産、その価格、譲渡人の氏名ならびにこれに対して付与する株式の種類および数を定款に記載または記録しなければならない。
ウ、設立に際して作成される定款は、公証人の認証を受けなければ効力を有しないが、会社成立後に定款を変更する場合は、公証人の認証は不要である。
エ、募集設立の場合には、発起人以外の者が、設立に際して発行される株式の全部を引き受けることができる。
オ、発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部の給付が必要である。

  1. ア・ウ 
  2. ア・エ 
  3. イ・エ  
  4. イ・オ  
  5. ウ・オ

答え.3

問33 改題

株式会社の取締役に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 取締役会決議について特別の利害関係を有する取締役は、取締役会の決議に参加することはできない。
  2. 取締役会設置会社において、取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引を行う場合には、取締役会において当該取引に関する重要な事実を開示して、その承認を受けなければならない。
  3. 取締役が法令または定款に違反する行為をしようとしている場合であって、それが行われると会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときには、6か月前から引き続き株式を有する株主は、会社のために取締役に対しその行為の差止め請求することをできる場合がある。
  4. 取締役がその任務を怠ったために、株式会社に対し、損害を与えた場合には、会社に対して損害の賠償をしなければならないが、総株主の同意があれば、会社はこの責任を免除することができる。
  5. 法律により取締役会が決定すべきものとされている事項についても、定款の定めによって代表取締役に決定権限を委譲することができる。

答え.5

問34

商法上の営業等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 商法上の問屋とは、自己の名をもって、他人のために、物品の販売または買入をなすことを業とする者である。
  2. 場屋取引とは、客に一定の設備を利用させることを目的とする取引であり、営業としてこれを行うときは、商行為となる。
  3. 商法上の仲立人とは、他人間の商行為について、代理または媒介をなすことを業とする者である。
  4. 匿名組合契約とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資を行い、その営業から生ずる利益を分配することを約する契約である。
  5. 商法上の代理商とは、一定の商人のために平常その営業の部類に属する取引の代理または媒介を行う独立した商人である。

答え.3

問36 改題

次の文章は、最高裁判決の一節である。ア『 』、イ『 』の法理は、一般にどのように呼ばれるか、記入しなさい(アは5字以内、イは9字以内)。
 集会の用に供される公共施設の管理者は、当該公共施設の種類に応じ、また、その規模、構造、設備等を勘案し、公共施設としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであって、これらの点からみて利用を不相当とする事由が認められないにもかかわらずその利用を拒否し得るのは、利用の希望が競合する場合のほかは、施設をその集会のために利用させることによって、他の基本的人権が侵害され、公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られるものというべきであり、このような場合には、その危険を回避し、防止するために、その施設における集会の開催が必要かつ合理的な範囲で制限を受けることがあるといわなければならない。そして、右の制限が必要かつ合理的なものとして肯認されるかどうかは、基本的には、基本的人権としての集会の自由の重要性と、当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきものである。本件条例7条による本件会館の使用の規制は、このような較量によって必要かつ合理的なものとして肯認される限りは、集会の自由を不当に侵害するものではなく、また、検閲に当たるものではなく、したがって、憲法21条に違反するものではない。
 以上のように解すべきことは、当裁判所大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。
 そして、このような較量をするに当たっては、ア『集会の自由の制約は、基本的人権のうち精神的自由を制約するものであるから、経済的自由の制約における以上に厳格な基準の下にされなければならない。』
 本件条例7条1号は、「公の秩序をみだすおそれがある場合」を本件会館の使用を許可してはならない事由として規定しているが、同号は、広義の表現を採っているとはいえ、右のような趣旨からして、本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、前記各大法廷判決の趣旨によれば、イ『単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である』と解するのが相当である。
(最判平成7年3月7日民集49巻3号687頁以下)

正解:二重の基準(二種の基準) 明白かつ現在の危険

問37

問題
次の文章の[A](漢字4字)[B](漢字5字)に当てはまる最も適切な語を記入しなさい。
 独占禁止法による公正取引委員会の審判・審決、特許法による特許庁の審判・審決、土地収用法による収用委員会の審理・裁決、労働組合法による労働委員会の審問・命令の手続など、独立性・中立性の高い行政委員会が、準司法的手続に従って、争訟の裁定など特定の処分をする手続を総称して[A]と呼ぶ。
 この手続に基づく決定(審決)に関しては、それについての訴訟の局面でも、「委員会の認定した事実は一定の場合に裁判所を拘束するという[B]の法則」や審級の省略など、通常の行政処分取消訴訟に対する特例が法定されていることがある。

正解:行政審判 実質的証拠

問38

問題
次の文章の[A](漢字4字から6字以内)[B](漢字4字)に当てはまる適切な語を記入しなさい。
 行政不服審査法によれば、審査請求の審理は原則として書面によるとされているほか、当事者のみならず審査庁自体が物件の提出要求をし、検証をするなど[A]の特色を有する。これは、行政不服審査手続が行政の自己抑制の仕組みであり、訴訟手続と比べて手続の簡易性と迅速性を必要とするためである。
これに対し、行政事件訴訟では、これまでは一般の民事訴訟と同様に当事者主義的な審理手続がとられてきたが、改正行政事件訴訟法により、行政訴訟の審理の充実・促進の観点から、裁判所が必要があると認めるときは、処分の理由を明らかにする資料を提出させる制度が、新たに導入された。これを[B]の特則という。

正解:職権探知主義(職権審理主義、職権主義) 釈明処分

問39

問題
次の1および2の文章は地方自治法の条文の一節である。[A][B](各漢字4字)に当てはまる適切な語を記入しなさい。
1、地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づき、かつ、国と地方公共団体との適切な[A]を踏まえたものでなければならない。
2、法律又はこれに基づく政令により地方公共団体が処理することとされる事務が[B]である場合においては、国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない。

正解:役割分担 自治事務


一般知識等

問44

次の文中の空欄[a]~[j]には、助詞「に」か「で」が入る。1~5のうち、助詞「に」が入る組合せはどれか。
 「ぶん ぶん ぶん」といえば、小学校1年生向けの単純明快な歌です。しかし、ここにも助詞の使い分けに関する問題が潜んでいます。
 ぶん ぶん ぶん 村野四郎作詞
 ぶん ぶん ぶん、はちがとぶ。
 おいけの まわりに
 のばらが さいたよ。
 ぶん ぶん ぶん、はちがとぶ。(文部省唱歌、昭和22年)
 この歌の「に」を「で」にすることもできるのです。次のようになります。
 おいけの まわりで
 のばらが さいたよ。
 紙幅の都合上割愛しますが「~で咲く」という用例はもちろんあります。また、例えば、
 今朝、バルコニー[ ]、鉢植えの朝顔の花が美しく咲いた。
 の括弧の中に入るのは、どちらかといえば「で」だという気もします。「で」は濁音で歌の中では好まれないということもあるかもしれませんが(確かに「~で咲く」という歌は知りません)、もっと本質的な意味上の違いがありそうです。では、なぜ「おいけのまわりで」でなく「おいけのまわりに」となっているのでしょう。
 日本語非母語話者は、よく「私はいま京都でいます」「私は京都に勉強しています」のような、(母語話者の語感からすれば)不自然な文を作ることがあります。そうしたことをヒントにしてよく言われるのは、「出来事が起きる場所は[a]を使う、物や人が存在
している場所は[b]を使う」というルールです。このルールで、
 図書室[c]百科事典がある。
 図書室[d]会議がある。
 という違いも説明できます。「百科事典」は物なので「存在」としての表現になり、[e]が使われますが、「会議」は出来事なので、[f]が使われる、というわけです。ここから、「お池のまわり[g]咲く」は、「咲くという出来事がお池のまわり[h]起きる」という意味だと説明できます。(中略)
さて、「場所+に」ですが、もちろん存在の場所を表すだけではありません。例えば、河原{に・で}空き缶を集める。
 のような違いもあります。「河原[i]」となると「空き缶を集める」ことが「河原」という場所で起きるという意味ですが、「河原[j]」となると、「河原」が「集めた空き缶の移動先」となっています。「場所+に」には移動先という用法もあるのです。
(出典 森山卓郎「『で』でない理由」より)

  1. a・c・h・j
  2. a・d・e・f
  3. a・d・g・i
  4. b・c・f・h
  5. b・c・e・j

答え.5

問45

次の文中の空欄[A]・[B]に入る語の組合せとして、最も適当なものはどれか。
 理論的解釈とは、一見、相異なる、あるいは矛盾する諸現象を説明しうる論理をうちたてることです。これは思いつきのような一つのアイディアを出して、それに該当すると思われる諸現象をあげて説明していくのとは違います。シンポジウムの中でも私が指摘したところですが、私の「タテ」の理論というものは、決して日本社会は「タテ」であるというアイディアとか信念に発して、諸現象を提示したものではありません。また、封建時代の主従関係、あるいは戦前の社会によくみられたという上から下への権力の行使にその原型を求めたものではありません。それはまず、現実に存在するさまざまな人間関係、集団と個人の関係、集団と集団の関係における諸現象に理論的なつながりを求めようとしたことから発しています。
 定着度の高い特定の人間関係、集団の孤立性、上司と部下、同僚との関係、夫婦、親子など家族成員の関係を他の諸社会との比較を念頭においてとらえ、日本のさまざまな諸現象を説明できる論理を見出そうとしたわけです。社会は常に動いているものですし、変化がみられます。したがって、一定の時期に固定した説明ではなく、ダイナミックな運動にたえられる一つのシステムとして抽出しなければならないと考えたわけです。
 たとえば、上位のステータスをもつ人(上役、父親など)の権力あるいは権威が失墜し、むしろ、部下や母親の方が強い発言権をもつようになった、というような現象は、集団の孤立性自体には何らの変更を与えませんし、一つの集団の中で誰かが[A]にある、という点でタテという構造の上で何らの変化はなく、同一の構造におけるバリエーションにすぎないとみることができます。したがって、亭主関白も嬶(かかあ)天下も同一の集団構造の異なる表現にすぎないことになります。すなわち、この構造のあり方は、夫と妻が対応し、その各々が侵すことのできない役割、場をもっているという[B]な構造とは異なっています。いずれにおいても「タテ」の関係が出ています。したがって日本における権威主義と民主主義の名のもとにみられる諸現象は同一の構造の中に見出されます。このように、権威主義から民主主義に大きく変わったとされることも、構造論の立場で他の諸社会との比較という大きな視野からみると、実は同一のシステムが存続しているとみることができます。
(出典 中根千枝「タテ社会の力学」より)

   A       B

  1. 周辺的な位置 二項対立的
  2. 中心的な存在 二律背反的
  3. 基礎的な位置 二極分解的
  4. 基礎的な存在 二極分解的
  5. 中心的な位置 二項対立的

答え.5

問46

次の文章は、歴史資科について述べているが、ア~オの中で、本文の内容・趣旨と合わないものはいくつあるか。
 平成11年にいわゆる情報公開法が制定され、行政文書が原則として開示されることになった。この法に対してはいろいろ異論もあるが、取りあえず公文書は公開されるものであるとされたことの意義は大きく、同時に歴史的公文書も今後は公開の方向に向かっていくはずと思われる。このことは、日本近現代史研究にとって非常に大きな意味を持っている。
 本来的に言えば、オーソライズされた文書による事実の確定が歴史研究の第一歩であり、その上で日記や書簡という私文書の肉付けで豊かな時代像が築かれていくのであるが、公文書の非公開はこの根幹部分を奪い去っていた。そのため研究も私文書=個人史料に依存する度合いが高く、場合によっては私文書で公文書を代用させなければならず、研究者は必死になって私文書を探し求めてきた。この結果は、おそらく他国にも誇れるほどの個人史料の蓄積となったと考えている。(中略)
 公文書の公開が促進された場合、私文書の意義は低下するかといえば、それは全く反対である。戦争・震災・火事等による公文書の散逸が激しい日本では依然として私文書が公文書の代用となろうし、それよりも公文書の公開の上にこそ私文書としての本来の価値がいっそう発揮されることになり、それが多彩な史料を駆使し意外な角度から切り込むような新しい歴史研究の扉を開くと期待されるからである。
(出典 李武嘉也「『近現代日本人物史料情報辞典』の読み方」より)

ア、公文書の公開は、「公」であることから、「公」に都合の良いような史的事実の解釈がでてくることが問題となる。
イ、日本におけるこれまでの「公文書の非公開」は、私文書研究という歴史研究分野の進展をもたらした。
ウ、公文書の公開は、歴史の事実の解明を可能にするようだが、私文書があればその虚偽性を証明することができる。
エ、私文書は、公文書の公開によりその補いという役割となり、歴史研究上の史料としての意義が低下することは免れない。
オ、私文書は、公文書の公開によって、私文書が存在する理由や文書の内容の理解が進み、史料としての意義がはっきりする。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

答え.3

問47

次の年表は、1962年のキューバ・ミサイル危機を挟んだ1954年~1970年における核兵器・宇宙開発関連の主な事件を記載したものである。(A)~(E)の中に入る国名の正しい組合せはどれか。
1954年3月1日 アメリカ、水爆実験(ビキニ環礁)
1957年5月15日 (A)水爆実験(クリスマス島)
     8月26日 ソ連、ICBM実験成功を発表
     10月4日 ソ連、史上初の人工衛星スプートニク1号打ち上げ
1958年1月31日 アメリカ、人工衛星エクスプローラー1号打ち上げ
1960年2月13日 (B)、原爆実験(サハラ)
1962年10月22日~28日 キューバ・ミサイル危機
1963年8月5日 米ソ英、部分的核実験停止条約調印
1964年10月16日 (C)、原爆実験
1967年6月17日 (D)、水爆実験
1968年7月1日 核拡散防止条約調印
     8月24日 (E)、水爆実験
1970年4月24日 中国、人工衛星打ち上げ

  A    B    C    D    E

  1. ソ連   イギリス フランス  中国   フランス
  2. アメリカ フランス イギリス  フランス 中国
  3. イギリス フランス 中国   中国    イギリス
  4. イギリス イギリス フランス フランス  中国
  5. イギリス フランス 中国   中国    フランス

答え.5

問48

議院内閣制に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1. 大統領制に比べて議院内閣制のほうが権力分立の原理が忠実に適用され、立法権と行政権の分離が徹底される。
  2. 議院内閣制を採っている国々では、日本国憲法と同様に、議会が最高機関であるとする明文の規定を置いている。
  3. 議院内閣制の母国とされるイギリスでは、国民の政治的意思を忠実に反映させる選挙制度としての比例代表制が採用されている。
  4. 日本の地方自治体の制度は首長主義を採っているが、議会の長に対する不信任と長による議会の解散とを対抗させる仕組みは議院内閣制と同様である。
  5. 議院内閻制では、内閣の意思決定と政権党の意思決定が対立することが通例であるため、内閣の閣内不一致による総辞職が引き起こされやすい。

答え.4

問49

国および地方公共団体が不足経費を補うために発行する公債に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 国の歳出について日本の財政法は、国会の議決による例外を除いて、「公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」と定めている。
  2. 不況対策としてとられる財政政策の手段には色々あるが、一般財源の不足を補うための歳入補填国債の発行はできない。
  3. 長期国債の償還、借り換えに対処するための短期国債は、日本銀行の引き受けが可能な政府短期証券と同一である。
  4. 地方債は国債と異なって日本銀行の引き受けが行われておらず、すべて郵便貯金、簡易保険の資金で購入されている。
  5. 地方分権を推進するための地方自治法の改正により、地方債の発行に対する国の関与は撤廃され、地方公共団体の裁量に委ねられることになった。

答え.1

問50改題

日本の中央銀行が現在果たしている役割に関する次の記述のうち、誤りが二つある。その組合せとして正しいものはどれか。
A、基準割引率および基準貸付利率(公定歩合)の変更、公開市場政策による市中資金量と金利の操作、市中銀行が預託している準備率の変更を通じて銀行の与信量を増減する。
B、為替率の適正な水準を維持するため、外貨集中制を維持し、外国為替と貿易との一体的な管理を行う。
C、国庫金の出納を扱い、政府短期証券を引き受け、政府財政の資金繰りの調整を行うほか、必要に応じて法定外の公債の引受けも行う。
D、銀行の経営実態を把握し、必要に応じて銀行に対し考査を行い、その指導・監督を行う。

  1. A・B
  2. A・C
  3. A・D
  4. B・C
  5. B・D

答え.4

問51 改題

国民の公的負担に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 国民負担率は、租税負担と社会保障負担とが国民所得に対して占める割合で示されており、国民の公的負担水準をマクロで表す指標となっている。
  2. 国民経済全体における租税の負担水準を示す租税負担率は、国家予算全体に占める国税収入の割合や、地方財政全体に占める地方税総収入の割合で表示される。
  3. 公債の発行による資金調達割合を増やすことは、国民の租税負担を抑制し、国民負担率の上昇を将来的にも抑える効果をもつ。
  4. 日本の場合、租税負担に占める国税の制合が、G7諸国の中できわめて高いのに対して、地方税の割合が最も低いという特色をもつ。
  5. 日本の場合、相続税が国税収入全体に占める割合は、G7諸国の中で比較的高く、近年では、国税収入の約1割にあたる相続税収入がある。

答え.1

問52

会計処理方法に関する次の記述のうち、企業会計原則に照らして正しいものはどれか。

  1. 同じ商品であっても、完成品はたな卸資産として扱われるが、原材料や半製品などの未完成品は、たな卸資産から除外されている。
  2. 予約販売も一種の契約に基づく取引である以上、その販売収益については、成約した時点で、そのすべてを売上高に計上する必要がある。
  3. 貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として取得原価によるが、たな卸資産の時価が取得原価より著しく下落して回復の見込みがないときは、時価による。
  4. 売掛金債権は貸借対照表中の流動資産として分類されるが、1年以内に費用化することが見込まれる前払費用は、繰延資産として取り扱われる。
  5. 開発費や試験研究費は、本来は投資として経理区分をすべきであるが、例外的に前払費用として取扱うことも可能である。

答え.3

問53

次世代育成支援対策推進法は、総務大臣の定める指針に即して、一般事業主が行動計画を策定するように義務づけている。指針で行動計画に盛り込むことがまったく予定されていない事項は、次のうちどれか。

  1. 多数の来訪者が利用する社屋等で子どもを連れた人が安心して利用できるよう、託児室や授乳コーナー、乳幼児と一緒に利用できるトイレの設置などの整備を行うこと。
  2. 子どもの出生時に、父親が5日程度の休暇を取得しやすい環境を整備すること、あるいは父親が年次有給休暇や育児休業を取得しやすくすること。
  3. チャイルドシートの貸出しや再利用、業務に使用する自動車の運転者に対する交通安全教育など、子どもを交通事故から守るために必要な措置を実施すること。
  4. 心豊かな子どもを育むため、保護者の働いているところを子どもが実際に見ることが出来る「子ども参観日」を実施すること。
  5. 小学校就学時から高校卒業時に至るまでの学齢期の子どもが病気になった時に、親が1年について5日以上の看護休暇をとることが可能な制度を実施すること。

答え.5

問54

次のア~オの記述は、地球環境保護に関する国際条約について述べたものである。正しい条約の組合せは、以下の1~5のうちどれか。
ア、水鳥の生息地である湿地と、そこに生息生育する動植物の保全を促進するため、国際的に重要な湿地の指定登録と、その適切な利用を求めている。
イ、絶滅のおそれがある野生動植物の保護を目的として、野生動植物の輸出入や持込みなどの規制を定めている。
ウ、有害廃棄物などの国境を越えた移動を規制する目的で、国際的な規制の枠組みや手続きを定めている。
エ、オゾン層の変化による悪影響から人の健康や環境を保護するため、国際協力の基本的な枠組みを定めている。
オ、国際地球観測年に育まれた国際的科学協力体制を維持発展させるため、地域の平和利用、科学調査の自由と国際協力の推進、領土権主張の凍結などを取り決めている。

    ア      イ       ウ       エ      オ

  1. ラムサール条約 ワシントン条約 バーゼル条約  ウィーン条約  南極条約
  2. バクー条約    ワシントン条約 ベルン条約   オタワ条約   南極条約
  3. ラムサール条約 ワシントン条約 バーゼル条約  オタワ条約  北極条約
  4. バクー条約    パリ条約     ジュネーブ条約 オタワ条約  北極条約
  5. ラムサール条約 パリ条約     ジュネーブ条約 ウィーン条約 砂漠条約

答え.1

問55

個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア、本法において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であり、故人の情報は含まれない。
イ、本法の規制の対象となる事業者は営利団体であり、非営利団体は対象外である。
ウ、顧客のメールアドレスと電話番号10,000件が入ったCD-ROMを紛失しても、個人名が含まれていなければ規制の対象とはならない。
エ、経営者が同一であれば、A社の顧客情報を別業種のB社が別目的で利用しても法律で禁止している第三者提供とはならない。
オ、個人情報取扱事業者による保有個人データの取扱いに対し、自己に関する情報の開示や訂正、利用停止等を求めることができる。

  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
  5. 五つ

答え.2

問56

迷惑メール防止法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 受信者が受信拒否の意図を送信者に伝えると、送信者は原則としてそれ以降特定電子メールの送信を止めなければならない。
  2. 大量の架空電子メールアドレスをコンピュータプログラム上で生成し、それらのアドレスに対し、特定電子メールを送信することは禁止されている。
  3. 特定電子メールを送信する際には、送信者の氏名または名称を表示しなければならない。
  4. この法律ではいわゆるオプトイン方式を採用しているため、特定電子メールを送信するには原則として事前に相手の同意が必要となる。
  5. 特定電子メールを送信者が一時に多数送信した場合であっても、電気通信事業者はこの利用者に対し電気通信役務の提供を拒絶することはできない。
    (注)特定電子メールとは、受信者の同意を得ずに送信される広告宣伝メールを指すものとする。

答え.5

問57

インターネットに関する次の用語説明のうち、誤っているものはどれか。

  1. バナー広告とは、ホームページ上に広告の画像を貼り、そのホームページと広告主のホームページにリンクを張る形式の広告のことである。
  2. スパイウェアとは、パソコンを使うユーザの行動や個人情報などを収集したり、パソコンの空き時間を借用して計算を行ったりするソフトのことで、それらの情報がスパイウェアの作成元に送られる仕組みとなっている。
  3. ポータルサイトとは、省庁等の公的機関のウェブサイトのことであるが、これらのウェブが不正に書き換えられる事件が多発しており、その社会的影響が極めて大きいことから、ポータルサイト対策は急務となっている。
  4. ブログとは、ウェブログの略で、日記的なウェブサイトのことを指す。一般的には、単なる日記ではなく、ネットで見つけた面白いニュース記事やウェブサイトヘのリンクを張り、そこに自分の評論を書き加えた記事が時系列に配置されている場合が多い。
  5. ユビキタス・コンピューティングとは、世の中のいたる所にコンピュータが存在し、コンピュータ同士が自律的に連携して動作する情報環境のことであり、現在、実現に向け広く研究開発が進められている。

答え.3

まちがい報告

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