第8章 運送営業(第569条~第592条)

令和2年4月1日施行版を更新しました。商法/第501条~第610条

商法もくじ

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第1節 総則

第569条(運送人)

  • 運送人とは陸上又は湖川、港湾に於て物品又は旅客の運送を為すを業とする者を謂ふ。

第2節 物品運送

第570条(運送状)

  1. 荷送人は、運送人の請求に因り運送状を交付することを要す。
  2. 運送状には、左の事項を記載し、荷送人之に署名することを要す。
    一. 運送品の種類、重量又は容積及び其荷造の種類、個数並に記号
    二. 到達地
    三. 荷受人の氏名又は商号
    四. 運送状の作成地及び其作成の年月日

第571条(貨物引換証の作成)

  1. 運送人は、荷送人の請求に因り貨物引換証を交付することを要す。
  2. 貨物引換証には、左の事項を記載し運送人之に署名することを要す。
    一. 前条第2項第一号乃至第三号に掲けたる事項
    二. 荷送人の氏名又は商号
    三. 運送賃
    四. 貨物引換証の作成地及び其作成の年月日

第572条(貨物引換証の文言証券性)

  • 貨物引換証を作りたるときは、運送に関する事項は、運送人と所持人との間に於ては、貨物引換証の定める所に依る。

第573条(貨物引換証の処分証券性)

  • 貨物引換証を作りたるときは、運送品に関する処分は、貨物引換証を以てするに非ざれば、之を為すことを得ず。

第574条(法律上当然の指図証券性)

  • 貨物引換証は、其記名式なるときと雖も裏書に依りて之を譲渡すことを得。但、貨物引換証に裏書を禁ずる旨を記載したるときは此限に在らず。

第575条(貨物引換証の物権的効力)

  • 貨物引換証に依り運送品を受取ることを得べき者に、貨物引換証を引渡したるときは、其引渡は運送品の上に行使する権利の取得に付き、運送品の引渡と同一の効力を有す。

第576条(運送賃請求権)

  1. 運送品の全部又は一部が不可抗力に因りて滅失したるときは、運送人は、其運送賃を請求することを得ず。若し運送人が既に其運送賃の全部又は一部を受取りたるときは之を返還することを要す。
  2. 運送品の全部又は一部が其性質、若くは瑕疵又は荷送人の過失に因りて滅失したるときは、運送人は運送賃の全額を請求することを得。

第577条(損害賠償責任)

  • 運送人は、自己若くは運送取扱人又は其使用人其他運送の為め使用したる者が運送品の受取、引渡、保管及び運送に関し注意を怠らざりしことを証明するに非ざれば、運送品の滅失、毀損又は延著に付き損害賠償の責を免るることを得ず。

第578条(高価品に関する特則)

  • 貨幣、有価証券其他の高価品に付ては、荷送人が運送を委託するに当たり、其種類及び価額を明告したるに非ざれば、運送人は損害賠償の責に任せず。

第579条(相次運送人の連帯責任)

  • 数人相次で運送を為す場合に於ては、各運送人は運送品の滅失、毀損又は延著に付き連帯して損害賠償の責に任す。

第580条(損害賠償の額)

  1. 運送品の全部滅失の場合に於ける損害賠償の額は、其引渡あるべかりし日に於ける到達地の価格に依りて之を定め。
  2. 運送品の一部滅失又は毀損の場合に於ける損害賠償の額は、其引渡ありたる日に於ける到達地の価格に依りて之を定め、但、延著の場合に於ては前項の規定を準用す。
  3. 運送品の滅失又は毀損の為め支払うことを要せさる運送賃、其他の費用は前二項の賠償額より之を控除す。

第581条(悪意又は重過失による損害賠償責任)

  • 運送品が運送人の悪意又は重大なる過失に因りて滅失、毀損又は延著したるときは運送人は、一切の損害を賠償する責に任ず。

第582条(運送品の処分権)

  1. 荷送人又は貨物引換証の所持人は、運送人に対し運送の中止、運送品の返還、其他の処分を請求することを得。此場合に於ては運送人は既に為したる運送の割合に応する運送賃、立替金及び其処分に因りて生じたる費用の弁済を請求することを得。
  2. 前項に定めたる荷送人の権利は、運送品が到達地に達したる後、荷受人が其引渡を請求したるときは消滅す。

第583条(荷受人による荷送人の権利の取得)

  1. 運送品が到達地に達したる後は、荷受人は運送契約に因りて生じたる荷送人の権利を取得す。
  2. 荷受人が運送品を受取りたるときは、運送人に対し運送賃其他の費用を支払う義務を負ふ。

第584条(貨物引換証の受戻証券性)

  • 貨物引換証を作りたる場合に於ては、之と引換に非ざれば、運送品の引渡を請求することを得ず。

第585条(供託又は競売の権利-荷受人不明の場合)

  1. 荷受人を確知すること能はざるときは、運送人は運送品を供託することを得。
  2. 前項の場合に於て、運送人が荷送人に対し相当の期間を定め、運送品の処分に付き指図を為すべき旨を催告するも荷送人が其指図を為さざるときは、運送品を競売することを得。
  3. 運送人が前二項の規定に従いて運送品の供託又は競売を為したるときは、遅滞なく、荷送人に対して、其通知を発することを要す。

第586条(引渡しに争いのある場合)

  1. 前条の規定は、運送品の引渡に関して争ある場合に之を準用す。
  2. 運送人が競売を為すには、予め荷受人に対し相当の期間を定めて運送品の受取を催告し、其期間経過の後、更に荷送人に対する催告を為すことを要す。
  3. 運送人は、遅滞なく、荷受人に対しても運送品の供託又は競売の通知を発することを要す。

第587条(売買に関する規定の準用)

  • 第524条第2項(損敗しやすい物と催告不要)及び第3項(競売代価の供託)の規定は、前二条の場合に之を準用す。

第588条(責任の特別消滅事由)

  1. 運送人の責任は、荷受人が留保を為さすして運送品を受取り、且運送賃其他の費用を支払いたるときは消滅す、但、運送品に直ちに発見すること能はざる毀損又は一部滅失ありたる場合に於て、荷受人が引渡の日より二週間内に運送人に対して其通知を発したるときは此限に在らず。
  2. 前項の規定は、運送人に悪意ありたる場合には之を適用せす。

第589条(運送取扱人に関する規定の準用)

  • 第562条(留置権)、第563条(中間運送取扱人の権利)、第566条(責任の短期時効)及び第567条(委託者又は荷受人に対する債権の短期時効)の規定は運送人に之を準用す。

第3節 旅客運送

第590条(旅客に関する責任)

  1. 旅客の運送人は、自己又は其使用人が、運送に関し注意を怠らさりしことを証明するに非ざれば、旅客が運送の為めに受けたる損害を賠償する責を免るることを得ず。
  2. 損害賠償の額を定めるに付ては、裁判所は被害者及び其家族の情況を斟酌することを要す。

第591条(引渡しを受けた手荷物に関する責任)

  1. 旅客の運送人は、旅客より引渡を受けたる手荷物に付ては、特に運送賃を請求せさるときと雖も物品の運送人と同一の責任を負ふ。
  2. 手荷物が到達地に達したる日より一週間内に旅客が、其引渡を請求せさるときは、第524条(売主による目的物の供託及び競売)の規定を準用す、但、住所又は居所の知れざる旅客には、催告及び通知を為すことを要せす。

第592条(引渡しを受けない手荷物に関する責任)

  • 旅客の運送人は、旅客より引渡を受けさる手荷物の滅失又は毀損に付ては、自己又は其使用人に過失ある場合を除く外、損害賠償の責に任せず。

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