第9章 寄託(第593条~第683条)

令和2年4月1日施行版を更新しました。商法/第501条~第610条

商法もくじ

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第1節 総則

第593条(寄託を受けた商人の責任)

  • 商人が其営業の範囲内に於て、寄託を受けたるときは、報酬を受けさるときと雖も善良なる管理者の注意を為すことを要す。

第594条(客の来集を目的とする場屋の主人の責任)

  1. 旅店、飲食店、浴場、其他客の来集を目的とする場屋の主人は、客より寄託を受けたる物品の滅失又は毀損に付き其不可抗力に因りたることを証明するに非ざれば、損害賠償の責を免るることを得ず。
  2. 客が特に寄託せさる物品と雖も場屋中に携帯したる物品が場屋の主人又は其使用人の不注意に因りて滅失又は毀損したるときは場屋の主人は損害賠償の責に任ず。
  3. 客の携帯品に付き、責任を負わさる旨を告示したるときと雖も場屋の主人は、前二項の責任を免るることを得ず。

第595条(高価品に関する特則)

  • 貨幣、有価証券其他の高価品に付ては、客が其種類及び価額を明告して、之を前条の場屋の主人に寄託したるに非ざれば、其場屋の主人は其物品の滅失又は毀損に因りて生じたる損害を賠償する責に任せず。

第596条(責任の短期時効)

  1. 前二条の責任は、場屋の主人が寄託物を返還し、又は客が携帯品を持去りたる後、一年を経過したるときは時効に因りて消滅す。
  2. 前項の期間は、物品の全部滅失の場合に於ては、客が場屋を去りたる時より之を起算す
  3. 前二項の規定は、場屋の主人に悪意ありたる場合には、之を適用せす。

第2節 倉庫営業

第597条(定義)

  • 倉庫営業者とは、他人の為めに物品を倉庫に保管するを業とする者を謂ふ。

第598条(預証券及び質入証券の発行)

  • 倉庫営業者は、寄託者の請求に因り寄託物の預証券及び質入証券を交付することを要す。

第599条(証券の記載事項)

  • 預証券及び質入証券には、左の事項及び番号を記載し倉庫営業者、之に署名することを要す。
    一. 受寄物の種類、品質、数量及び其荷造の種類、個数並に記号
    二. 寄託者の氏名又は商号
    三. 保管の場所
    四. 保管料
    五. 保管の期間を定めたるときは其期間
    六. 受寄物を保険に付したるときは保険金額、保険期間及び保険者の氏名又は商号
    七. 証券の作成地及び其作成の年月日

第600条(帳簿の記載)

  • 倉庫営業者が預証券及び質入証券を寄託者に交付したるときは、其帳簿に左の事項を記載することを要す。
    一. 前条第一号、第二号及び第四号乃至第六号に掲けたる事項
    二. 証券の番号及び其作成の年月日

第601条(分割部分に対する証券の発行)

  1. 預証券及び質入証券の所持人は、倉庫営業者に対し寄託物を分割し、且其各部分に対する預証券及び質入証券の交付を請求することを得。此場合に於ては所持人は、前の預証券及び質入証券を倉庫営業者に返還することを要す。
  2. 前項に定めたる寄託物の分割及び証券の交付に関する費用は、所持人之を負担す

第602条(文言証券性)

  • 預証券及び質入証券を作りたるときは、寄託に関する事項は、倉庫営業者と所持人との間に於ては、其証券の定める所に依る。

第603条(法律上当然の指図証券性)

  1. 預証券及び質入証券は、其記名式なるときと雖も裏書に依りて之を譲渡し、又は之を質入することを得。但、証券に裏書を禁する旨を記載したるときは此限に在らず。
  2. 預証券の所持人が未だ質入を為さざる間は、預証券及び質入証券は各別に之を譲渡すことを得ず。

第604条(証券の物権的効力)

  • 第573条(運送品に関する処分)及び第575条(貨物引換証の引渡し)の規定は、預証券及び質入証券に之を準用す。

第605条(証券滅失による再発行)

  • 預証券又は質入証券が滅失したるときは、其所持人は相当の担保を供して、更に其証券の交付を請求することを得。此場合に於ては倉庫営業者は、其旨を帳簿に記載することを要す。

第606条(質入証権の第一質入裏書)

  1. 質入証券に第一の質入裏書を為すには、債権額、其利息及び弁済期を記載することを要す。
  2. 第一の質権者が前項に掲けたる事項を預証券に記載して之に署名するに非ざれば、質権を以て第三者に対抗することを得ず。

第607条(預証券所持人の義務)

  • 預証券の所持人は、寄託物を以て預証券に記載したる債権額及び利息を弁済する義務を負ふ。

第608条(質入証券所持人の債権の弁済場所)

  • 質入証券所持人の債権の弁済は、倉庫営業者の営業所に於て、之を為すことを要す。

第609条(拒絶証書の作成)

  • 質入証券の所持人が弁済期に至り支払を受けさるときは、手形に関する規定に従いて拒絶証書を作らしむることを要す。

第610条(質入証券所持人の競売請求)

  • 質入証券の所持人は、拒絶証書作成の日より一週間を経過したる後に非ざれば、寄託物の競売を請求することを得ず。

第611条(競売代金中からの支払)

  1. 倉庫営業者は競売代金の中より競売に関する費用、受寄物に課すべき租税、保管料其他保管に関する費用及び立替金を控除したる後、其残額を質入証券と引換に其所持人に支払うことを要す。
  2. 競売代金の中より前項に掲けたる費用、租税、保管料、立替金及び質入証券所持人の債権額、利息、拒絶証書作成の費用を控除したる後、余剰あるときは倉庫営業者は之を預証券と引換に其所持人に支払うことを要す。

第612条(競売代金不足の場合の処置)

  • 競売代金を以て質入証券に記載したる債権の全部を弁済すること能はざりしときは、倉庫営業者は、其支払いたる金額を質入証券に記載して、其証券を返還し、且其旨を帳簿に記載することを要す。

第613条(裏書人に対する遡きゅう権)

  1. 質入証券の所持人は、先つ寄託物に付き、弁済を受け尚ほ不足あるときは、其裏書人に対して不足額を請求することを得。
  2. 手形法第45条第1項、第3項、第5項、第6項(遡求の通知) 、第48条第1項(遡求金額)、第49条(再遡求金額)及び第50条第1項(遡求義務者の権利)の規定は、前項に定めたる不足額の請求に之を準用す。
  3. 手形法第52条第3項(戻為替相場主義による償還額の算定) の規定は、不足額の請求を受くる者の営業所又は住所の所在地が其請求を為す者の営業所又は住所の所在地と異なる場合に於ける償還額の算定に付き之を準用す。

第614条(遡求権を喪失)

  • 質入証券の所持人が、弁済期に至り支払を受けさりし場合に於て、拒絶証書を作らしめさりしとき又は拒絶証書作成の日より二週間内に寄託物の競売を請求せさりしときは、裏書人に対する請求権を失ふ。

第615条(質入証券所持人の権利の短期時効)

  • 質入証券所持人の預証券所持人に対する請求権は、弁済期より一年質入証券裏書人に対する請求権は、寄託物に付き弁済を受けたる日より六个月質入証券裏書人の其前者に対する請求権は、償還を為したる日より六个月を経過したるときは、時効に因りて消滅す。

第616条(寄託者、証券所持人の倉庫業者に対する権利)

  1. 寄託者又は預証券の所持人は、営業時間内何時にでも倉庫営業者に対して、寄託物の点検若くは其見本の摘出を求め又は其保存に必要なる処分を為すことを得。
  2. 質入証券の所持人は、営業時間内何時にでも倉庫営業者に対して、寄託物の点検を求むることを得。

第617条(保管責任)

  • 倉庫営業者は自己又は其使用人が受寄物の保管に関し、注意を怠らさりしことを証明するに非ざれば、其滅失又は毀損に付き損害賠償の責を免るることを得ず。

第618条(保管料請求)

  • 倉庫営業者は受寄物出庫の時に非ざれば、保管料及び立替金、其他受寄物に関する費用の支払を請求することを得ず。但、受寄物の一部出庫の場合に於ては、割合に応じて其支払を請求することを得。

第619条(保管の期間)

  • 当事者が保管の期間を定めさりしときは、倉庫営業者は、受寄物入庫の日より六个月を経過したる後に非ざれば、其返還を為すことを得ず。但、已むことを得ざる事由あるときは此限に在らず。

第620条(受戻証券性)

  • 預証券及び質入証券を作りたる場合に於ては、之と引換に非ざれば、寄託物の返還を請求することを得ず。

第621条(預証券の所持人の寄託物全部の返還請求権)

  • 預証券の所持人は、質入証券に記載したる債権の弁済期前と雖も其債権の全額及び弁済期まての利息を倉庫営業者に供託して、寄託物の返還を請求することを得。

第622条(預証券の所持人の寄託物一部の返還請求権)

  1. 寄託物が同種類にして同一の品質を有し且分割することを得べき物なるときは預証券の所持人は債権額の一部及び其弁済期まての利息を供託し其割合に応じて寄託物の一部の返還を請求することを得。此場合に於て倉庫営業者は供託を受けたる金額及び返還したる寄託物の数量を預証券に記載し且其旨を帳簿に記載することを要す。
  2. 前項に定めたる寄託物の一部出庫に関する費用は預証券の所持人之を負担す。

第623条(質入証券所持人の供託金に対する権利)

  1. 前二条の場合に於て質入証券の所持人の権利は供託金の上に存在す。
  2. 第612条(競売代金が債権弁済に不足の場合の処置)の規定は前条第1項の供託金を以て質入証券に記載したる債権の一部を弁済したる場合に之を準用す。

第624条(供託又は競売の権利)

  1. 第524条第1項及び第2項(売主の目的物供託及び競売の権利)の規定は、寄託者又は預証券の所持人が寄託物を受取ることを拒み、又は之を受取ること能はざる場合に之を準用す。此場合に於て質入証券の所持人の権利は競売代金の上に存在す。
  2. 第611条(競売代金)及び第612条(競売代金の不足)の規定は前項の場合に之を準用す。

第625条(責任の特別消滅事由)

  • 第588条(運送人の責任の消滅事由)の規定は、倉庫営業者に之を準用す。

第626条(責任の短期時効)

  1. 寄託物の滅失又は毀損に因りて生じたる倉庫営業者の責任は、出庫の日より一年を経過したるときは時効に因りて消滅す。
  2. 前項の期間は、寄託物の全部滅失の場合に於ては倉庫営業者が預証券の所持人、若し其所持人が知れざるときは、寄託者に対して其滅失の通知を発したる日より之を起算す。
  3. 前二項の規定は、倉庫営業者に悪意ありたる場合には、之を適用せず。

第627条(倉荷証券の発行、預証券に関する規定の準用)

  1. 倉庫営業者は、寄託者の請求あるときは、預証券及び質入証券に代へて倉荷証券を交付することを要す。
  2. 倉荷証券には預証券に関する規定を準用す。

第628条(倉荷証券による寄託物の買入れの場合の一部出庫)

  • 倉荷証券を以て質権の目的と為したる場合に於て質権者の承諾あるときは、寄託者は債権の弁済期前と雖も寄託物の一部の返還を請求することを得。此場合に於て倉庫営業者は、返還したる寄託物の種類、品質及び数量を倉荷証券に記載し、且其旨を帳簿に記載することを要す。

第629条~第683条 (保険) 削除 (平成20法57)

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