第6章 保険(815~841の2)

商法もくじ


標準 2.0

第815条(定義)

  1. 海上保険契約は、航海に関する事故に因りて生ずることあるべき損害の填補を以て、其目的とす。
  2. 海上保険契約には、本章に別段の定ある場合を除く外保険法(平成20年法律第56号)第2章(損害保険)第1節(成立) 乃至第4節(終了) 及び第6節(適用除外) 並に第5章(雑則) の規定を適用す。

第816条(保険者の損害てん補責任)

  • 保険者は、本章又は保険契約に別段の定ある場合を除く外、保険期間中保険の目的に付き航海に関する事故に因りて生じたる一切の損害を填補する責に任ず。

第817条(保険者の共同海損分担額てん補責任)

  • 保険者は、被保険者が支払うべき共同海損の分担額を填補する責に任す、但、保険価額の一部を保険に付したる場合に於ては、保険者の負担は保険金額の保険価額に対する割合に依りて之を定め。

第818条(船舶保険の保険価格)

  • 船舶の保険に付ては、保険者の責任が始まる時に於ける其価額を以て保険価額とす。

第819条(積荷保険の保険価格)

  • 積荷の保険に付ては、其船積の地及び時に於ける其価額及び船積並に保険に関する費用を以て保険価額とす。

第820条(希望利益保険の保険価格)

  • 積荷の到達に因りて得べき利益又は報酬の保険に付ては、契約を以て保険価額を定めさりしときは、保険金額を以て保険価額としたるものと推定す。

第821条(航海保険の法定保険期間)

  1. 一航海に付き船舶を保険に付したる場合に於ては、保険者の責任は、荷物又は底荷の船積に著手したる時を以て始まる。
  2. 荷物又は底荷の船積を為したる後、船舶を保険に付したるときは、保険者の責任は契約成立の時を以て始まる。
  3. 前二項の場合に於て保険者の責任は、到達港に於て荷物又は底荷の陸揚が終了したる時を以て終わる。但、其陸揚が不可抗力に因らすして遅延したるときは其終了すべかりし時を以て終わる。

第822条(積荷保険及び希望利益保険の法定保険期間)

  1. 積荷を保険に付し又は積荷の到達に因りて得べき利益、若くは報酬を保険に付したる場合に於ては保険者の責任は、其積荷が陸地を離れたる時を以て始まり、陸揚港に於て其陸揚が終了したる時を以て終わる。
  2. 前条第3項但、書の規定は、前項の場合に之を準用す。

第823条(海上保険証券の記載事項)

  • 海上保険証券には、保険法第6条第1項(損害保険契約の締結時の書面交付) に掲けたる事項の外、左の事項を記載することを要す。
    一. 船舶を保険に付したる場合に於ては、其船舶の名称、国籍並に種類、船長の氏名及び発航港、到達港又は寄航港の定あるときは其港名
    二. 積荷を保険に付し又は積荷の到達に因りて得べき利益、若くは報酬を保険に付したる場合に於ては、船舶の名称、国籍並に種類、船積港及び陸揚港

第824条(航海の変更)

  1. 保険者の責任が始まる前に於て航海を変更したるときは、保険契約は其効力を失ふ。
  2. 保険者の責任が始まりたる後、航海を変更したるときは、保険者は其変更後の事故に付き責任を負ふことなし、但、其変更が保険契約者又は被保険者の責に帰すへがらさる事由に因りたるときは此限に在らず。
  3. 到達港を変更し、其実行に著手したるときは、保険したる航路を離れさるときと雖も航海を変更したるものと看做す。

第825条(離路その他の危険の変更・増加)

  • 被保険者が発航を為し、若くは航海を継続することを怠り又は航路を変更し、其他著しく危険を変更若くは増加したるときは、保険者は、其変更又は増加以後の事故に付き責任を負ふことなし、但、其変更又は増加が事故の発生に影響を及ぼささりしとき、又は保険者の負担に帰すべき不可抗力若くは正当の理由に因りて生じたるときは此限に在らず。

第826条(船長の変更)

  • 保険契約中に船長を指定したるときと雖も船長の変更は、契約の効力に影響を及ぼさず。

第827条(船舶の変更)

  • 積荷を保険に付し又は積荷の到達に因りて得べき利益若くは報酬を保険に付したる場合に於て船舶を変更したるときは保険者は其変更以後の事故に付き責任を負ふことなし但、其変更が保険契約者又は被保険者の責に帰すべからさる事由に因りたるときは此限に在らず。

第828条(船舶未確定の予定保険)

  1. 保険契約を為すに当たり荷物を積込むべき船舶を定めさりし場合に於て、保険契約者又は被保険者が其荷物を船積したることを知りたるときは、遅滞なく、保険者に対して船舶の名称及び国籍の通知を発することを要す。
  2. 保険契約者又は被保険者が、前項の通知を怠りたるときは、保険契約は其効力を失ふ。

第829条(保険者の法定免責事由)

  • 保険者は、左に掲けたる損害又は費用を填補する責に任せず。
    一. 保険の目的の性質、若くは瑕疵、其自然の消耗又は保険契約者、若くは被保険者の悪意若くは重大なる過失に因りて生じたる損害
    二. 船舶又は運送賃を保険に付したる場合に於て、発航の当時安全に航海を為すに必要なる準備を為さず、又は必要なる書類を備へざるに因りて生じたる損害
    三. 積荷を保険に付し又は積荷の到達に因りて得べき利益、若くは報酬を保険に付したる場合に於て傭船者、荷送人又は荷受人の悪意、若くは重大なる過失に因りて生じたる損害
    四. 水先案内料、入港料、燈台料、検疫料其他船舶又は積荷に付き航海の為めに出たしたる通常の費用

第830条(少額損害又は費用の不てん補)

  1. 共同海損に非ざる損害又は費用が其計算に関する費用を算入せずして保険価額の百分の二を超えざるときは、保険者は之を填補する責に任せず。
  2. 右の損害又は費用が保険価額の百分の二を超えたるときは、保険者は、其全額を支払うことを要す。
  3. 前二項の規定は、当事者が契約を以て保険者の負担せさる損害又は費用の割合を定めたる場合に之を準用す。
  4. 前三項に定めたる割合は、各航海に付き之を計算す。

第831条(一部損害のてん補責任)

  • 保険の目的たる積荷が毀損して陸揚港に到達したるときは、保険者は其積荷が毀損したる状況に於ける価額の毀損せさる状況に於て有すべかりし価額に対する割合を以て、保険価額の一部を填補する責に任ず。

第832条(不可抗力による積荷売却の場合の填補責任)

  1. 航海の途中に於て不可抗力に因り保険の目的たる積荷を売却したるときは、其売却に依りて得たる代価の中より運送賃、其他の費用を控除したるものと保険価額との差を以て保険者の負担とす。但、保険価額の一部を保険に付したる場合に於て保険法第19条(一部保険)の適用を妨げず。
  2. 前項の場合に於て買主が代価を支払はざるときは、保険者は其支払を為すことを要す。但、其支払を為したるときは、被保険者の買主に対して有せる権利を取得す。

第833条(保険委付の原因)

  • 左の場合に於ては被保険者は、保険の目的を保険者に委付して保険金額の全部を請求することを得。
    一. 船舶が沈没したるとき
    二. 船舶の行方が知れざるとき
    三. 船舶が修繕すること能はざるに至りたるとき
    四. 船舶又は積荷が捕獲せられたるとき
    五. 船舶又は積荷が官の処分に依りて押収せられ六个月間解放せられさるとき

第834条(同前-船舶の行方不明)

  1. 船舶の存否が六个月間分明ならざるときは、其船舶は行方の知れざるものとす。
  2. 保険期間の定ある場合に於て其期間が前項の期間内に経過したるときと雖も被保険者は、委付を為すことを得。但、船舶が保険期間内に滅失せさりしことの証明ありたるときは、其委付は無効とす。

第835条(同前-代船による運送の継続)

  • 第833条第三号(船舶が修繕すること能はざるに至りたるとき)の場合に於て船長が、遅滞なく、他の船舶を以て積荷の運送を継続したるときは、被保険者は其積荷を委付することを得ず。

第836条(委付の通知)

  1. 被保険者が委付を為さんと欲するときは、三个月内に保険者に対して其通知を発することを要す。
  2. 前項の期間は、第833条(保険委付の原因)第1号(沈没)、第三号(修繕)及び第四号(積荷の捕獲)の場合に於ては、被保険者が其事由を知りたる時より之を起算す。
  3. 再保険の場合に於ては、第1項の期間は其被保険者が自己の被保険者より委付の通知を受けたる時より之を起算す。

第837条(委付の要件)

  1. 委付は単純なることを要す
  2. 委付は保険の目的の全部に付て之を為すことを要す但、委付の原因が其一部に付て生じたるときは其部分に付てのみ之を為すことを得。
  3. 保険価額の一部を保険に付したる場合に於ては委付は保険金額の保険価額に対する割合に応じて之を為すことを得。

第838条(保険者の委付承認)

  1. 保険者が委付を承認したるときは、後日其委付に対して異議を述ふることを得ず。

第839条(委付の効力)

  1. 保険者は、委付に因り被保険者が保険の目的に付き有せる一切の権利を取得す。
  2. 被保険者が委付を為したるときは、保険の目的に関する証書を保険者に交付することを要す。

第840条(委付の際の他の保険契約等の通知)

  1. 被保険者は、委付を為すに当たり保険者に対し保険の目的に関する他の保険契約、並に其負担に属する債務の有無、及び其種類を通知することを要す。
  2. 保険者は、前項の通知を受くるまでは保険金額の支払を為すことを要せず。
  3. 保険金額の支払に付き期間の定あるときは、其期間は保険者が第1項の通知を受けたる時より之を起算す。

第841条(保険者の委付不承認)

  • 保険者が委付を承認せさるときは、被保険者は、委付の原因を証明したる後に非ざれば、保険金額の支払を請求することを得ず。

第841条の2(相互保険に対する準用)

  • 本章の規定は、相互保険に之を準用す。但、其性質が之を許さざるときは此限に在らず。


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