商法まとめ

商法もくじ

商法の重要条文をわかりやすくまとめています。


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商法の適用

  • 商法総則は、会社及び外国会社以外の商人に適用される(第11 条1項カッコ書)。
  • 商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、商法の定めるところによる(第1条1項)。
  • 商事に関し、商法に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる(第1条2項)。
  • 当事者の一方のために商行為となる行為については、商法をその双方に適用する(第3条1項)。
  • 当事者の一方が2人以上いる場合に、その1人のために商行為となる行為については、商法をその全員に適用する(第3条2項)。

商行為

  • 商行為とは、営利活動に関する行為のうち、商法で商行為と規定されている行為をいう。(第501 条~503 条)
  • 商行為には、行為の客観的性質から当然に商行為とされるもの絶対的商行為(第501 条)、営業としてするときは、商行為とされるもの営業的商行為(第502 条)、商人が営業のためにすることによって商行為とされるもの付属的商行為(第503 条)がある。
  • 絶対的商行為と営業的商行為は、商人の概念を定める基礎となる意味で「基本的商行為」という。また、絶対的商行為に対して、営業的商行為と付属的商行為を「相対的商行為」という。

絶対的商行為

  • 絶対的商行為とは、行為の主体が商人か否かを問わず、また、営業としてされたか否かにかかわりなく、その客観的性質によって当然に商行為とされるものをいい、商法は、次の行為を絶対的商行為としている(第501 条)。
  1. 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産もしくは有価証券の有償取得、又はその取得したものの譲渡を目的とする行為。
  2. 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約、及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為。
  3. 取引所(商品取引所--証券取引所など)においてする取引。
  4. 手形その他の商業証券に関する行為。

営業的商行為

  • 次の行為は、営業としてするときは、商行為とする(第502 条)。ただし、もっぱら「賃金」を得る目的でする者の行為は、たとえ営業としてされても商行為とはならない(第502 条)。
  1. 「賃貸」する意思をもってする動産もしくは不動産の有償取得もしくは賃借、又はその取得しもしくは賃借したものの賃貸を目的とする行為。
  2. 「他人」のためにする製造又は加工に関する行為。
  3. 電気又はガスの「供給」に関する行為。
  4. 「運送」に関する行為。
  5. 作業又は労務の「請負」。
  6. 出版、印刷又は撮影に関する行為。
  7. 客の来集を目的とする「場屋」(旅館--飲食店--劇場--遊園地など)における取引き。
  8. 両替その他の銀行取引
  9. 保険
  10. 寄託の引受け
  11. 仲立(なかだち)又は取次に関する行為
  12. 商行為の代理の引受け
  13. 信託の引受け

付属的商行為

  • 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする付属的商行為(第503 条1項)。商人の行為であることを必要とするが、特定の営業を開始する目的でされる準備行為(例えば、飲食店を開業する者が店舗を借りるため賃貸借契約を交わす場合など)も、営業のためにする行為であるから付属的商行為になる。
  • 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する(第503 条2項)。

商人

固有の商人

  • 商法上、商人には、商行為を基礎とする「固有の商人」と、商行為を基礎としない「擬制商人」とがある。「固有の商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう(第4条1項)。
  • 「自己の名をもって」とは、自己が法律上商行為より生ずる権利義務の主体となることをいう(大判大8.5.19)。
    自らが実際に営業活動をするか否かを問わない。また、商行為を業として行ったとしても、それが権利義務を他人に帰属させるために行っているのであれば、その者は商人とはならない。例えば、会社の場合には、会社が商人であり、代表取締役は商人ではない。
  • 「業とする」とは、営利の目的で、商行為を継続的、計画的に行うことをいう。営利の目的の有無は、同種(数種でもよい)の行為を反復継続して行うという意思が客観的に認識可能であればよい。
  • 特定の営業を開始する目的でその準備行為をした者は、営業開始の「意思の実現」であり、それにより商人たる資格を取得する。その準備行為もまた商人が営業のためにする行為であるから商行為になる(最判昭33.6.19)。

擬制商人

  • 商行為を基礎としない商人を擬制商人という。店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者、又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす(第4条2項)。例えば、農業を営む者が自作の野菜を持ち歩いて売るときは商人とならないが、店舗を設けて販売するときは商人となる。なお、信用金庫法に基づいて設立された信用金庫の行う業務は、営利を目的とするものではないから、信用金庫は商法上の商人にはあたらない(信用金庫の非商人性 最判昭63.10.18)。

小商人(こしょうにん)

  • 商人のうち、法務省令で定めるその営業のために使用する財産の価額が法務省令で定める金額を超えないものを、商法が全面的に適用される通常の商人(完全商人)に対し、小商人という。小商人には、商法総則の規定のうち、未成年者及び後見人の営業の登記、商業登記、商号の登記、商業帳簿、及び支配人の登記に関する規定などについては、適用しない(第7条)。

制限行為能力者に関する特別規定

  • 未成年者が、商人の営業を行うときは、その登記をしなければならない(第5条)。
  • 後見人(未成年後見人又は成年後見人)が、被後見人(未成年者又は成年被後見人)のために商人の営業を行うときは、その登記をしなければならない(第6条1項)。後見人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない(第6条2項)。

商業登記

  • 商業登記とは、「商業登記簿」にされる登記をいう。すなわち、商法総則の規定により登記すべき事項は、当事者の申請により、商業登記法の定めるところに従い、商業登記簿にこれを登記する(第8条)。商法総則の規定により登記すべき事項とは、未成年者登記(第5条)、後見人登記(第6条)、変更の登記又は消滅の登記(第10 条)、商号の登記(第11 条2項)、支配人の登記(第22 条)などである。

商業登記の効力

  • 商法総則の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときも、同様とする(第9条1項)。
  • 故意又は過失によって不実(事実と相違すること)の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない(同条2項)。

変更の登記及び消滅の登記

  • 商法総則の規定により登記した事項に変更が生じ、又はその事項が消滅したときは、当事者は、遅滞なく、変更の登記又は消滅の登記をしなければならない(第10 条)。

*重要項目1

  • (1)商事に関し、商法に定めがない事項については「商慣習」に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる(第1条2項)。
  • (2)当事者の一方のために商行為となる行為については、もう一方の当事者に対しても商法が適用される。(第3条1項)。
  • (3)取引所においてする取引などの「絶対的商行為」は、行為の主体が商人か否かを問わず、また、営業としてされたか否かにかかわらず、「商行為」とされる(第501 条3号)。
  • (4)電気又はガスの供給に関する行為は、営業としてするときは、商行為となる。営業的商行為(第502条3号)。
  • (5)手形その他の商業証券に関する行為などの「絶対的商行為」は、行為の主体が商人であるか否かを問わず、また、営業としてされたか否かにかかわりなく、「商行為」とされる(第501条4号)。
  • (6)もっぱら「賃金」を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、たとえ営業としてされても「商行為とはならない」(第502条ただし書)
  • (7)商人の行為は、すべて営業のためにするものと推定する。(第503条2項)。
  • (8)鉱業を営む者は、商行為をすることを業としていなくても商人とみなされる。擬制商人(第4条2項)。
  • (9)「自己の名をもって商行為をなす」とは、自己が法律上商行為より生ずる権利義務の主体となることをいい、営業者として、行政官庁に届け出ているかどうかを問わない(大判大8.5.19)。
  • (10)信用金庫法に基づいて設立された信用金庫の行う業務は、営利を目的とするものではないから、信用金庫は商法上の商人にはあたらない。(最判昭63.10.18)。
  • (11)小商人については、商法総則の規定のうち、商業登記、商業帳簿に関する規定などについては、適用しない(第7条)のであり、すべての規定が適用されないわけではない。
  • (12)未成年者が商人の営業を行うときは、その登記をしなけれならないのであり(第5条)。登記をすれば商人として営業できる。
  • (13)商法総則の規定により登記した事項に変更が生じ、又はその事項が消滅したときは、当事者は、遅滞なく、変更の登記又は消滅の登記をしなければならない(第10条)。
  • (14)故意又は過失によって不実の事項を商業登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない(第9条2項)。
  • (15)商法総則の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときも、同様とする(第9条1項)。

商号

商号(1)

  • 商人は、その氏、氏名その他の名称をもって、その商号とすることができる(第11 条1項)。商号とは、商人が営業上、自己を表示するために用いる名称をいい、日本文字だけでなく、ローマ字、アラビヤ数字、及びその他の符号(中点)、 .(ピリオド)などを用いることもできる(商業登記規則50条1項)。
  • 商人は、その商号の登記をすることができる(第11条2項)。商人については、商号を登記するかどうかは任意である。

商号(2)

  • 何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない(第12 条1項)。
  • 上記の規定に違反する名称又は商号の使用によって、営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる(12条2項)。
  • 不正商号使用の規定に違反した者は、100 万円以下の過料に処する(第13条)。

商号(3)

  • 自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う(第14条)。

商号の譲渡

  • 商人の商号は、営業とともにする場合、又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる(第15条1項)。
  • 上記の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗できない(同条2項)。

営業譲渡人の競業の禁止

  • 営業を譲渡した商人(譲渡人)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区及び地方自治法の指定都市にあっては、区)の区域内、及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その営業を譲渡した日から20 年間は、同一の営業を行ってはならない(第16 条1項)。
  • 譲渡人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その営業を譲渡した日から30年の期間内に限り、その効力を有する(同条2項)。
  • 上記の規定にかかわらず、譲渡人は、不正の競争の目的をもって同一の営業を行ってはならない(同条3項)。

譲渡人の商号を使用した譲受人の責任等

  • 営業を譲り受けた商人(譲受人)が、譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う(第17条1項)。
  • 譲受人の債務弁済責任の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない(同条2項)。
  • 譲受人が譲受人の債務弁済責任の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、営業を譲渡した日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する(同条3項)。
  • 譲受人の債務弁済責任に規定する場合に、譲渡人の営業によって生じた債権について、その譲受人にした弁済は、弁済者が善意であり、かつ、重過失がないときは、その効力を有する(同条4項)。

譲受人による債務の引受け

  • 譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者は、その譲受人に対して弁済の請求をすることができる(第18条1項)。
  • 譲受人が債務の引受けの規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、債務の引受けの広告があった日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する(同条2項)。

商業帳簿

  • 商人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする(第19条1項)。
  • 商人は、その営業のために使用する財産について、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表)を作成しなければならない(同条2項)。
  • 商人は、帳簿閉鎖の時から10 年間、その商業帳簿及びその営業に関する重要資料を保存しなければならない(同条3項)。

商業使用人

  • 商業使用人とは、雇用契約により特定の商人に従属し、対外的な商業上の業務を補助する者であり、かつ、その商人の営業上の代理権を有する者をいう。商法は、支配人、ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人、物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為)を目的とする店舗の使用人について、営業上の代理権の発生--変更--消滅及びその範囲を規定している。商業使用人は、雇用契約により特定の商人に従属し、組織の内部でこれを補助する者であり、これに対して代理商とは、独立の商人として外部から補助する者で、その商人の使用人でないものをいう。

支配人

  • 商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる(第20条)。
  • 支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(21条1項)。
  • 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる(第21条2項)。この規定の反対解釈として、支配人は、当然には他の支配人を選任又は解任する権限を有さない。
  • 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない(第21条3項)。「善意の第三者」には、代理権に加えられた制限を知らなかったことにつき過失のある第三者は含まれるが、重過失のある第三者は含まれない(最判平2.2.22)。
  • 支配人の権限濫用の場合は、相手方が善意である限り支配人の行為のいかんにかかわらず責任を負うが、支配人の意図が自己の利益を図り、相手方がその意図を知り又は知り得たときは、民法第93条(心理留保)ただし書を類推適用し、営業主はその行為につき責任を負わない。(最判昭51.10.1)

支配人の登記

  • 商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。支配人の代理権の消滅についても、同様とする(第22条)。

支配人の競業の禁止

  • 支配人は、商人の許可を受けなければ、次の行為をしてはならない(第23条1項)。
  1. 自ら営業を行うこと。
  2. 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。
  3. 他の商人又は会社もしくは外国会社の使用人となること。
  4. 会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
  • 支配人が、自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をしたことによって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する(同条2項)。

表見支配人

  • 商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称(支店長、営業所長など)を付した使用人(表見支配人)は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない(第24条)。

*重要項目2

  • (16)商号は、商人がその営業活動において自己を表示する名称をいうが、「ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するもの」を用いることができる(商業登記規則50条1項)。
  • (17)商人が数種の独立した営業をし、又は数個の営業を有する場合は、その各営業又は営業所につき、別異の商号を有することを妨げないが、同一の営業につき同一営業所で数個の商号を有することは許されない。「商号単一の原則」(大決大13.6.13)
  • (18)不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある商号を使用する者がいる場合に、これによって営業上の利益を侵害された商人は、その営業上の利益を侵害する者に対し、その侵害の停止を請求することができる(第12条2項)。
  • (19)自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う(第14条)。
  • (20)商人の商号は、営業とともにする場合、又は「営業を廃止する場合」に限り、譲渡することができる(第15条1項)。
  • (21)商人の商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。(第15 条2項)。
  • (22)営業を譲渡した商人は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区及び地方自治法の指定都市にあっては、区)の区域内、及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その営業を譲渡した日から20 年間は、同一の営業を行ってはならない(第16条1項)。
  • (23)営業を譲渡した商人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その営業を譲渡した日から30 年の期間内に限り、その効力を有する(第16 条2項)。
  • (24)営業を譲渡した商人は、不正の競争の目的をもって同一の営業を行ってはならない。(第16 条3項)。
  • (25)営業を譲り受けた商人(譲受人)が営業を譲渡した商人(譲渡人)の商号を引き続き使用する場合において、譲渡人の営業によって生じた債権について、その譲受人にした弁済は、弁済者が善意であり、かつ、「重過失」がないときは、その効力を有する(第17 条4項)。のであり、重過失に限定される。
  • (26)営業を譲り受けた商人(譲受人)が、営業を譲渡した商人(譲渡人)の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者は、その譲受人に対して弁済の請求をすることができる。(第18 条1項)。
  • (27)商人は、商業帳簿及びその営業に関する重要資料を、帳簿閉鎖の時から10 年間保存しなければならない(第19 条3項)。
  • (28)商人は、その営業のために使用する財産について、適時に、正確な商業帳簿を作成しなければならないが、小商人については、商業帳簿に関する規定は適用されない。(第7条、第19 条2項)。
  • (29)支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができないが、「善意の第三者」には、代理権に加えた制限を知らなかったことに「過失のある第三者も含まれる」が、重過失のある第三者は含まれない(最判平2.2.22)。ただ単に知らなかったことに過失のある第三者には「対抗することができない」(第21条3項)。
  • (30)商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。(第22条)。
  • (31)支配人は、商人の許可を受けなければ、他の商人又は会社もしくは外国会社の使用人となることはできない(第23条1項3号)。
  • (32)商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関する一切の「裁判外」の行為をする権限を有するものとみなす(第24条)。のであり、裁判上の行為は含まれない。

ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人

  • 商人の営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人(部長、課長、係長、主任など)は、当該事項に関する「一切の裁判外の行為」をする権限を有する(第25 条1項)。当該使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない(同条2項)。「善意の第三者」には、代理権に加えられた制限を知らなかったことにつき過失のある第三者は含まれるが、重過失のある第三者は含まれない(最判平2.2.22)。

物品の販売等を目的とする店舗の使用人

  • 物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為)を目的とする店舗の使用人は、その店舗にある物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない(第26条)。

代理商

  • 代理商とは、商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介(仲介、あっせん)をする者で、その商人の使用人でないものは、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない(第27条)。

代理商の競業の禁止

  • 代理商は、商人の許可を受けなければ、次の行為をしてはならない(第28条1項)。
  1. 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。
  2. その商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
  • 代理商が、自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をしたことによって代理商又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する(同条2項)。

契約の解除

  • 商人及び代理商は、契約の期間を定めなかったときは、2か月前までに予告し、その契約を解除することができる(第30 条1項)。
  • 上記の規定にかかわらず、やむをえない事由があるときは、商人及び代理商は、いつでもその契約を解除することができる(同条2項)。

代理商の留置権

  • 代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまでは、商人のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない(第31条)。

商行為

商行為の代理

  • 商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない(第504条)。
  • ただし書の「代理人に対して履行の請求をすることを妨げない」としている趣旨は、本人と相手方との間には、すでに代理関係が生じているが、相手方において、代理人が本人のためにすることを知らなかったとき(過失によって知らなかったときを除く)は、相手方保護のため、相手方は、その選択に従い、本人との法律関係を否定し、代理人との法律関係を主張することを許容したものである(最判昭43.4.24)。

商行為の委任

  • 商行為の受任者は、委任の本旨に反しない範囲内において、委任を受けていない行為をすることができる(第505条)。
  • 商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては、消滅しない(第506条)。

契約の申込み

  • 商人である対話者の間において、契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う(第507条)。
  • 商人である隔地者の間において、承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う(第508 条1項)。
    民法523 条(申込者は、遅延した承諾をあらたな申込みとみなすことができる)の規定は、この場合について準用する(第508条2項)。

契約の申込みを受けた者の諾否通知義務

  • 商人が平常取引をする者から、その営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない(第509 条1項)。
  • 商人がその通知を発することを怠ったときは、その商人は、契約の申込みを承諾したものとみなす(同条2項)。

多数当事者間の債務の連帯

  • 数人の者が、その1人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する(第511条1項)。
  • 保証人がある場合において、債務が主たる債務者の商行為によって生じたものであるとき、又は保証が商行為であるときは、主たる債務者及び保証人が各別の行為によって債務を負担したときであっても、その債務は、各自が連帯して負担する(同条2項)。

利息請求権

  • 商人間において金銭の消費貸借をしたときは、貸主は、法定利息(法定利率による利息)を請求することができる(第513 条1項)。
  • 商人がその営業の範囲内において他人のために金銭の立替えをしたときは、その立替えの日以後の法定利息を請求することができる(第513条2項)。
  • 商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年6分とする(第514条)。

*重要項目3

  • (33)商人の営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。(第25 条1項)。
  • (34)物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為)を目的とする店舗の使用人は、その店舗にある物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が「悪意」であったときは、この限りでない(第26条)。
  • (35)代理商は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。(第27 条)。
  • (36)代理商は、商人の許可を受けなければ、その商人の営業と「同種の事業を行う会社」の取締役、執行役又は業務を執行する社員となることはできない(第28 条1項2号)。商人の許可を受ければ「同種の事業を行う会社」の取締役、執行役又は業務を執行する社員となることができるし、「異業種の事業を行う会社」であれば関係ない。
  • (37)商人及び代理商は、契約の期間を定めなかったときは、2か月前までに予告し、その契約を解除することができる(第30 条1項)。
  • (38)代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、当事者が別段の意思表示をしたときを除くほか、その弁済を受けるまでは、商人のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。(第31条)。
  • (39)商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、原則として、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない(第504条)。
  • (40)商行為の受任者は、「委任の本旨に反しない範囲内」において、委任を受けていない行為をすることができる(第505条)。
  • (41)商行為の委任による代理権は、「本人の死亡によっては、消滅しない」(第506条)
  • (42)商人である対話者の間において、契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。(第507条)。
  • (43)商人が平常取引をする者から、その営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならず、商人がこの通知を発することを怠ったときは、その商人は、契約の申込みを承諾したものとみなす(第509条)。
  • (44)数人の者が、その1人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときは、その債務は、各自が連帯して負担する。(第511条1項)。
  • (45)商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年6分とする(第514条)。

債務の履行の場所

  • 商行為によって生じた債務の履行をすべき場所が、その行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない(第516条1項)。
  • 指図債権及び無記名債権の弁済は、債務者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)においてしなければならない(同条2項)。

商事消滅時効

  • 商行為によって生じた債権は、商法に別段の定めがある場合を除くほか、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる(第522条)。
    主たる債務が民事債務であり、保証債務が商行為によって生じた債務であるときは、主たる債務については民法の規定が適用されるので10 年の消滅時効にかかり、保証債務については商法の規定が適用されるので5年の消滅時効にかかる(大判昭13.4.8)。

商事売買

  • 商事売買とは、商人間の売買、あるいは当事者の双方または一方にとって商行為である売買をいう。商法は、商事売買についても、民法の売買契約に関する規定が適用されることを前提としているが、商人間の売買について、特則を規定している。

売主による目的物の供託--競売

  • 商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる(第524条1項前段)。
  • 売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない(第524条3項)。このような自助売却を認めることにより、売主が、売買代金を回収できるようにしている。

定期売買の履行遅滞による解除

  • 定期売買とは、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない売買である。商人間の定期売買において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす(第525条)。

買主による目的物の検査等

  • 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない(第526 条1項)。
  • 上記に規定する場合において、買主は、検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額もしくは損害賠償の請求をすることができない(第526条2項前段)。この場合において、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない(第526条3項)。
  • 目的物受領後の検査に規定する場合においては、買主は、契約の解除をしたときであっても、売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない(第527条1項本文)

中立営業

仲立人

  • 仲立人とは、他人間の商行為の媒介をすることを業とする者で(第543条)、「仲立ちに関する行為」は、営業的商行為である(第502条11号)。たとえば、旅行業者は、旅客運送契約や宿泊契約の媒介をする仲立人である。仲立人は、その媒介した行為につき、当事者のために支払いその他の給付を受けることができない。ただし、別段の意思表示又は慣習があるときは、この限りでない(第544条)。

仲立人(結約書及び帳簿に関する義務)

  • 当事者間において行為が成立したときは、仲立人は、遅滞なく各当事者の氏名または商号、行為の年月日およびその要領を記載した書面(結約書)を作り、署名の後、これを各当事者に交付しなければならない(第546条1項)。
  • 仲立人は、帳簿に、上記に掲げた事項を記載しなければならない。そして、当事者は、いつでも、仲立人が自己のために媒介した行為につき、その帳簿の謄本を交付するよう請求することができる(第547条)。

氏名(商号)黙秘の義務等

  • 当事者が、その氏名または商号を相手方に示さないように命じたときは、仲立人は、結約書や、帳簿の謄本に、その氏名または商号を記載することができない(第548条)。この場合においては、仲立人は、相手方に対し、自ら履行をする責任を負う(第549条)。

報酬請求権

  • 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる(第512条)。
    仲立人は、当事者間において行為が成立し結約書を作成して各当事者に交付した後に、報酬を請求することができる(第550 条1項)
    仲立人の報酬は、当事者双方が、平分して負担する(第550条2項)。
  • *ここでの「平分」とは、当事者間の内部分担のことではなく、仲立人が、直接各当事者に対して、報酬を(半額ずつ)請求できるということをいう

*重要項目4

  • (46)商行為によって生じた債務の履行をすべき場所が、その行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない(第516条1項)。
  • (47)主たる債務が民事債務であり、保証債務が商行為によって生じた債務であるときは、主たる債務は10 年の消滅時効にかかり、保証債務は5年の消滅時効にかかる(大判昭13.4.8)。
  • (48)商事売買とは、商人間の売買、あるいは当事者の双方または一方にとって商行為である売買をいう。
  • (49)商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる(第524 条1項前段)。
  • (50)商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす(第525条)。
  • (51)商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない(第526条1項)。
    この場合においては、買主は、契約の解除をしたときであっても、「売主」の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない(第527条1項本文)。
  • (52)仲立人は、別段の意思表示又は慣習があるときを除き、その媒介した行為につき、当事者のために支払いその他の給付を受けることができない(第544条)。
  • (53)当事者間において仲立ちに関する行為が成立したときは、仲立人は、遅滞なく各当事者の氏名または商号、行為の年月日およびその要領を記載した書面(結約書)を作り、署名の後、これを各当事者に交付しなければならない(第546 条1項)。
  • (54)仲立ちに関する行為において、当事者が、その氏名または商号を相手方に示さないように命じたときは、仲立人は、結約書や、帳簿の謄本に、その氏名または商号を記載することができない(第548条)。
  • (55)仲立人の報酬は、仲立人が、各当事者に対して半額ずつ請求することができる。仲立人の報酬は、当事者双方が、平分して負担する(第550条2項)。

取次ぎ

  • 取次ぎに関する行為は、営業的商行為である(第502条11 号)。
  • 取次ぎに関する行為とは、自己の名をもって、他人の計算において、法律行為をすることを引き受けることをいう。
  • 「自己の名をもって」とは、自己が当事者になるということで、「他人の計算において」とは、損益は、他人(委託者)に帰属するということである。取次ぎを業としてなす者には、問屋(といや)--準問屋--運送取扱人などがある。

問屋営業

問屋

  • 問屋とは、自己の名をもって、他人のために、物品の販売または買入れをすることを業とする者をいう(第551 条)。
  • 問屋は、他人のためになした販売または買入れにより、相手方に対して、みずから権利を取得し、また、義務を負う(第552 条1項)。証券会社などがその例である。
  • 問屋と委託者との間は、商法の規定のほか、委任及び代理に関する規定による(第552条2項)。すなわち、問屋は、善良な管理者の注意をもって、委託された事務を処理しなければならず(民法644条)、自己の名で売買した物品を、委託者に引き渡さなければならない(民法646条)。

履行担保の義務等

  • 問屋は、委託者のためにした販売または買入れにつき、相手方がその債務を履行しない場合、自らその履行をする責任を負う(第553条本文)。
  • 問屋が委託者の指定した金額より廉価にて販売し、または高価にて買入れをした場合、自ら差額を負担すれば、その販売または買入れは、委託者に対して効力を生ずる(第554 条)。問屋が取引所の相場のある物品の販売または買入れの委託を受けたときは、自ら買主または売主となることができる(第555 条1項前段)。これを問屋の介入権という。仲立人の介入は仲立人が当事者にはならないが、問屋が介入すると問屋は当事者になる。

供託・競売

  • 「商人間の売買においての売主による目的物の供託及び競売」に関する規定は、問屋に準用する(第556 条)。問屋が買入れの委託を受けた場合において、委託者が買い入れた物品を受け取ることを拒み、または受け取ることができないときは、問屋は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合において、問屋がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、委託者に対してその旨の通知を発しなければならない。また、この場合において買い入れた物品を競売に付したときは、問屋は、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。

通知義務・留置権

  • 問屋は、委託者のために売買をしたときは、遅滞なく、委託者に対して、その旨の通知を発しなければならない。また、問屋が委託者に対して債権を有する場合、その弁済を受けるまでは、委託者のために占有する物品を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない(第557条)。

準問屋

  • 準問屋とは、自己の名をもって、他人のためにする行為を業とする場合で、物品の売買以外の行為を業とする者をいう。準問屋については、問屋に関する規定を準用する(第558条)。
  • 主としてサービス(役務)の取次ぎを業とする者が、準問屋として扱われる。

*重要項目5

  • (56)取次ぎに関する行為とは、自己の名をもって、他人の計算において、法律行為をすることを引き受けることをいう。
  • (57)問屋と委託者との間は、商法の規定のほか、委任及び代理に関する規定による(第552条2項)。すなわち、問屋は、善良な管理者の注意をもって、委託された事務を処理しなければならず(民法644条)、自己の名で売買した物品を、委託者に引き渡さなければならない(民法646 条)。
  • (58)問屋が委託者の指定した金額より廉価にて販売し、または高価にて買入れをした場合、自ら差額を負担すれば、その販売または買入れは、委託者に対して効力を生ずる(第554条)。
  • (59)問屋が買入れの委託を受けた場合において、委託者が買い入れた物品を受け取ることを拒み、または受け取ることができないときは、問屋は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合において、問屋がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、委託者に対してその旨の通知を発しなければならない(第556条)。
  • (60)問屋が委託者に対して債権を有する場合、その弁済を受けるまでは、委託者のために占有する物品を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない(第557条)。
  • (61)準問屋とは、自己の名をもって、他人のためにする行為を業とする場合で、物品の売買以外の行為を業とする者をいう。

運送取扱営業

運送取扱人

  • 運送取扱人とは、自己の名をもって、物品運送の取次ぎをすることを業とする者をいう。運送取扱人については、問屋に関する規定を準用する(第559条)。
  • 運送取扱人は、運送人に運送を委託するという契約をするのであり、自らは運送はしない。

運送契約

  • 運送契約は、運送という事実行為を完成するための請負契約である。商法502条4号(運送に関する行為)に規定する営業的商行為としての「運送に関する行為」とは、運送を引き受けること(請負)であり、これを業とする運送人は、商人である(第4条1項)。
  • 運送人とは、陸上又は湖川、港湾において物品又は旅客の運送を業とする者をいう(第569条)。

運送営業

物品運送(運送状等)

  • 荷送人は、運送人の請求により、運送状を交付しなければならない(第570条1項)。運送状には、次の事項を記載して、荷送人はこれに署名しなければならない(第570条2項)。
  1. 運送品の種類、重量又は容積及びその荷造の種類、個数並びに記号
  2. 到達地
  3. 荷受人の氏名又は商号
  4. 運送状の作成地及びその作成の年月日
    • 運送人は、荷送人の請求により、貨物引換証を交付しなければならない(第571条1項)。

物品運送(損害賠償)

  • 貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するにあたり、その種類および価額を明告した場合でなければ、運送人は、損害賠償の責任を負わない(第578条)。
  • 運送品が全部滅失した場合の損害賠償額は、引渡しをすべきであった日における到達地の一般市場価格によって算定する(第580 条1項)が、運送人に悪意または重過失があった場合は、一切の損害を賠償する責任を負う(第58 条)。
  • 運送人の責任は、荷受人が留保をしないで運送品を受取り、運送賃等を支払ったときに消滅するが、直ちに発見できない毀損や一部滅失があった場合、引渡しの日から2週間内に通知が発せられたときは、責任を負う(第588条1項)。
  • 運送品の滅失--毀損--延着によって生じた損害に関する運送人の責任は、原則として、1年で時効によって消滅する(第589条--566条)。

旅客運送人の責任

  • 旅客の運送人は、自己又はその使用人が運送に関し注意を怠っていないことを証明しなければ、旅客が運送のために受けた損害を賠償しなければならない(第590条1項)。
    この場合における損害賠償額を定めるについて、裁判所は、被害者およびその家族の情況を斟酌しなければならない(第590条2項)。
  • 旅客の運送人は、旅客より引渡しを受けた手荷物については、特に運送賃を請求しないときであっても、物品の運送人と同一の責任を負う(第591 条1項)。
  • 手荷物が到達地に達した日より1週間内に旅客がその引渡しを請求しないときは、商法524 条の売主による目的物の供託及び競売の規定が準用される(第591 条2項)。
  • 旅客の運送人は、旅客より引渡しを受けていない手荷物の滅失又は毀損については、自己又はその使用人に過失がある場合を除くほか、損害賠償の責任を負わない(第592条)。

寄託

寄託

  • 寄託(きたく)とは、目的物の保管を約して、その物を受け取ることによって成立する契約である(民法657条)。商人がその営業の範囲内で受けた寄託を商事寄託といい、商法には、商人の責任を加重する規定が設けられている。
    • 商人がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をしなければならない(第593 条)。

寄託(場屋営業者の責任)

  • 場屋とは、客の来集を目的とする場所をいい、旅館、飲食店、劇場、遊園地などをいう。場屋営業者が客から寄託を受けた物品の滅失--毀損については、原則として、不可抗力によることを証明しなければ、責任を免れることができない(第594条1項)。
  • 高価品については、客が明告して寄託したのでなければ、場屋営業者は、責任を負わない(第595条)。
  • 寄託を受けておらず、客が携帯していた物品については、場屋営業者やその使用人に過失があった場合にのみ、損害賠償責任が生ずる(第594 条2項)。
  • 当事者双方が納得して、免責特約をすれば、場屋営業者の責任は免除されるが、場屋営業者による一方的な告示は、免責特約にはならない(第594条3項)。

倉庫営業

寄託(倉庫営業者の責任)

  • 「寄託の引受け」は、営業的商行為とされている(第502 条10 号)。これは、他人のために物品の保管をする契約で、倉庫営業者のする法律行為がその典型である。倉庫営業者とは、他人のために物品を倉庫に保管することを業とする者をいう(第597条)。
  • 商人がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をしなければならない(第593 条)。
  • 倉庫営業者は、過失がないことを証明しなければ、受寄物の滅失または毀損について損害賠償責任を免れることができない(第617 条)。

匿名組合

匿名組合契約

  • 匿名組合契約とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる契約である(第535条)。匿名組合員の出資及び権利義務は、次の通りである(第536条)。
  1. 匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。
  2. 匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる。
  3. 匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない。
  4. 匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しない。
  • 匿名組合契約は、匿名組合契約の解除のほか、匿名組合の目的である事業の成功又はその成功の不能、営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたこと、営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたことによって終了する(第541 条)。

交互計算

交互計算

  • 交互計算*は、商人間又は商人と商人でない者との間で平常取引をする場合において、一定の期間内の取引から生ずる債権及び債務の総額について相殺をし、その残額の支払いをすることを約することによって、その効力を生ずる(第529 条)。当事者が相殺をすべき期間を定めなかったときは、その期間は、6か月とする(第531 条)。
  • 当事者は、債権及び債務の各項目を記載した計算書の承認をしたときは、当該各項目について異議を述べることができない。ただし、当該計算書の記載に錯誤又は脱漏があったときは、この限りでない(第532 条)。
  • 相殺によって生じた残額については、債権者は、計算の閉鎖の日以後の法定利息を請求することができる(第533条1項)。
  • 各当事者は、いつでも交互計算の解除をすることができる。この場合において、交互計算の解除をしたときは、直ちに、計算を閉鎖して、残額の支払いを請求することができる(第534 条)。
  • 継続的な取引から相互に債権債務が発生する場合に、取引ごとに決算するかわりに一定期間内に発生した債権債務をひとまとめにして差引計算して相殺する方法。頻繁な授受に伴う危険性や手間を省くことで資金の有効活用が図れる利点がある。
  • 交互計算に組み入れた各個の債権は、格別に取立て又は譲渡することはできず、譲渡の不許については、民法第466条2項(債権の譲渡性)ただし書の適用がない。したがって各個の債権の差押・転付命令も第三者の善意悪意を問わず無効である(大判昭11.3.11)。

*重要項目6

  • (62)荷送人は、運送人の請求により、運送状を交付しなければならない(第570 条1項)。
  • (63)旅客の運送人は、自己又はその使用人が運送に関し注意を怠っていないことを証明しなければ、旅客が運送のために受けた損害を賠償しなければならない(第590 条1項)が、この場合における損害賠償額を定めるについて、裁判所は、被害者およびその家族の情況を斟酌しなければならない(同法590 条2項)。
  • (64)運送人の責任は、荷受人が留保をしないで運送品を受取り、運送賃等を支払ったときに消滅するが、直ちに発見できない毀損や一部滅失があった場合、引渡しの日から2週間内に通知が発せられたときは、責任を負う(第588 条1項)。
  • (65)運送品が全部滅失した場合の損害賠償額は、引渡しをすべきであった日における到達地の一般市場価格によって算定する(第580 条1項)が、運送人に悪意または「重過失」があった場合は、一切の損害を賠償する責任を負う(同法581 条)。
  • (66)旅客の運送人は、自己又はその使用人が運送に関し注意を怠っていないことを証明しなければ、旅客が運送のために受けた損害を賠償しなければならない(商法590 条1項)。
  • (67)手荷物が到達地に達した日より1週間内に旅客がその引渡しを請求しないときは、旅客の運送人は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる(商法591 条2項)。
  • (68)商人がその営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をしなければならない(商法593条)。
  • (69)寄託を受けておらず、客が携帯していた物品については、場屋営業者やその使用人に「過失」があった場合にのみ、損害賠償責任が生ずる(第594条2項)。
  • (70)場屋営業者が、「携帯品につき紛失の責任を負わない」旨の掲示をした場合においては、当事者双方が納得して、免責特約をすれば、場屋営業者の責任は免除されるが、場屋営業者による一方的な告示は、免責特約にはならない(第594 条3項)。
  • (71)匿名組合契約とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる契約である(第535 条)。
  • (72)交互計算は、商人間又は商人と商人でない者との間で平常取引をする場合において、一定の期間内の取引から生ずる債権及び債務の総額について相殺をし、その残額の支払いをすることを約することによって、その効力を生ずる(第529 条)。

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