平成14年度 行政書士試験
択一式等
法令問題
[問題1~問題40]
問1
酒酔い運転で人身事故を起こした運転者に対する法的対応として、ア~力の記述で妥当でないものを組み合わせたのは、1から5のうちどれか。
ア、運転免許を停止しまたは取り消すことは、行政処分として認められる。
イ、道路交通法違反として刑罰を科することは認められる。
ウ、刑法による刑罰を科することは認められる。
エ、被害者との示談が成立したときは、刑罰を科されることはない。
オ、民事的賠償として、懲罰的損害賠償が認められる。
カ、懲役に服したときは、行政処分および損害賠償責任は免除される。
- ア・カ
- ア・ウ
- イ・オ
- イ・エ
- エ・カ
問2
次の文章は、19世紀のドイツのある法学者の文章を訳したものである。文中の「A」に入れるのに最も適当な語はどれか。
「憲法典の「A」を、憲法の「A」と混同してはならない。法律畑にいない人は、法命題は制定法に規定されていなければ存在しないものと考え、法学の任務が制定法の字句解釈に尽きるとみなす誤りに、陥りやすい。そして、ある特定の法命題が制定法によって定められているか否かは、しばしば、ほとんど無意味な偶然に左右される問題であることが、認識されないのである。けれども憲法典の「A」は、争われている問題の解決を、よりー般的な法原理から導く作業を要請するだけのことである。」
- 慣習法
- 法諺
- 欠缺
- 擬制
- 禁反言
問3
「国民代表」についての次の記述のうち、他の選択肢とは異なる考え方に基づくものはどれか。
- 参議院については、全国を一選挙区として選挙させ、特別の職能的知識経験を有する者の選出を容易にすることによって、職能代表的に運営すべきである。
- 衆議院については、都道府県を一選挙区として選挙させ、都道府県住民の意思を集約的に反映させることで、地域代表の色彩を加えるべきである。
- 代表とは、社会構造の複雑・多様化にともなって社会の中に多元的に存在するさまざまな利害の分布を、そのまま国会に反映することだと解すべきである。
- 両議院の議員は、自分の応援してくれる特定の階級、党派、地域住民など一部の国民を代表するのではなく、あくまで全国民を代表するものと解すべきである。
- 特に衆議院の議員定数については、地域振興の観点から過疎地域に多めに定数を配布することによって、社会的弱者の代表を実現すべきである。
問4
日本国憲法によって認められる「議院の権能」として、誤っているものはどれか。
- 国政調査権の行使
- 議院規則の制定
- 議員に対する懲罰
- 議員の資格争訟の裁判
- 弾劾裁判所の設置
問5
次の記述のうち、最高裁判所の判例として誤っているものはどれか。
- 裁判所が具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるという見解には、憲法上および法令上の根拠がない。
- 憲法第81条の列挙事項に挙げられていないので、日本の裁判所は、条約を違憲審査の対象とすることはできない。
- 国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、それが、法律上の争訟になり、有効無効の判断が法律上可能であっても、司法審査の対象にならない。
- 第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有権を奪ってはならない。
- 国会議員の立法行為は、憲法の文言に明白に違反しているにもかかわらず立法を行うというような例外的な場合を除き、国家賠償法上は違法の評価を受けない。
問6
次の記述のうち、日本国憲法の条文に照らして、正しいのはどれか。
- 公務員を選定し、およびこれを罷免することは、人類普遍の権利である。
- すべて公務員には、公益のため、無定量の奉仕が要求される。
- 公務員の報酬は、在任中、これを減額することができない。
- 選挙における投票の秘密は、公共の福祉に反しない限りで、保障される。
- 選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。
問7 改題
次のア~オの記述のうち、問題となる規制の態様が、「事前抑制」に当たり、なおかつ、関連する最高裁判例の趣旨に合致しているものは、いくつあるか。
ア、外国から輸入しようとした出版物にわいせつな表現が含まれている場合、これを税関が輸入禁制品として没収するのは、違憲である。
イ、裁判所が、仮処分の形で、名誉毀損的表現を含む書物の出版を前もって差し止めるのは、合憲である。
ウ、新しく小売市場を開設しようとするものに対して、既存の小売市場との距離が接近していることを理由に、県知事がこれを不許可とするのは、違憲である。
エ、勤務時間外に公務員が支持政党のポスターを公営掲示場に貼りに行った行為を、公務の政治的中立性を理由に処罰するのは、合憲である。
オ、高校の政治経済の教科書を執筆し、その出版を企てるものに対して、国が予めその内容を審査し、記述の変更を求めるのは、違憲である。
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- 四つ
- 五つ
問8
情報公開・個人情報保護審査会設置法が定める「情報公開審査会」に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 情報公開審査会は、総務省に置かれる。
- 情報公開審査会は単なる諮問機関ではなく、自ら開示・不開示の決定をなす権限を有する機関である。
- 情報公開審査会には、いわゆるインカメラ審理の権限は認められていない。
- 情報公開審査会の委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
- 情報公開審査会は、全国に8つの支部(地方支分部局)を有している。
問9
行政処分により課された義務を履行しない者に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 義務不履行者には刑事罰が科されることが原則であり、罰則の間接強制により行政処分の実効性が確保される。
- 義務不履行者には、執行罰としての過料が課されることとなっており、金銭的な負担を通じて行政処分の実効性が確保されることが原則である。
- 義務不履行者に対しては、行政機関の職員による行政強制を通じて、義務を履行させることが原則である。
- 義務不履行者に対しては、行政強制、罰則の間接強制などによる実効性の確保が図られるが、統一的な仕組みが設けられているわけではない。
- 義務不履行者に対し義務履行を確保するためには、行政機関は裁判所に出訴して司法的執行に委ねなければならない
問10
国または公共団体が、国家賠償法に基づいて被害者に賠償金を支払った後の求償関係についての記述として、妥当なものはどれか。
- 国または公共団体は、加害行為を行った公務員に対し、その加害行為が軽過失による場合であっても、求償することができる。
- 国または公共団体の加害行為を行った公務員に対する求償権については、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は適用されない。
- 国または公共団体は、加害行為を行った公務員に対して求償することが認められていることから、職務上の義務違反を理由とする懲戒処分を行うことはできない。
- 国または公共団体が加害行為を行った公務員に対して求償する場合、被害者に支払った損害賠償額全額、支払日以降の法定利息および弁護士費用を請求できる。
- 国または公共団体が、被害者との間の和解に基づいて損害賠償金を支払ったときは、加害行為を行った公務員に対しては求償できない。
問11
次の記述のうち、行政事件訴訟法の条文に照らして正しいものはどれか。
- 「不作為の違法確認の訴え」の地方裁判所係属中に行政庁が当該申請を認める処分をした場合、原告国民は適時に、違法であった不作為に基づく損害の賠償を求める訴えに変更する旨を申し立てることができる。
- 「処分の取消しの訴え」の利益が訴訟係属中に消滅した場合には、損害賠償の訴えに変更することは許されない。
- 「処分の取消しの訴え」の地方裁判所係属中に、関連請求として損害賠償請求を追加的に併合するようなことは、許されない。
- 「無効等確認の訴え」を、処分の無効に基づく損害賠償の訴えに変更するようなことは、許されない。
- 「裁決の取消しの訴え」を「処分の取消しの訴え」と併合して提起するようなことは、許されない。
問12 改題
行政手続法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 行政手続法は、いわゆる情報公開法に先んじて施行された。
- 行政手続法の条文総数は、46ヵ条である。
- 行政手続法は、その第1条(目的)で行政運営における公正・透明の原則と並んで、説明責任(アカウンタビリティ)を明示している。
- 行政手続法が規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。
- 地方公共団体は、行政手続法第3条第3項において同法の規定を適用しないこととされた手続について、同法の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
問13
次のうち、行政手続法の規律の対象となっていない手続は、いくつあるか。
ア、命令制定手続
イ、申請に対する処分手続
ウ、計画策定手続
エ、行政指導手続
オ、届出手続
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- 四つ
- 五つ
問14
次のうち、行政手続法上、聴聞を経る処分の手続には認められても、弁明の機会の付与を経る処分の手続には認められていない手続的保障は、いくつあるか。
ア、予定される不利益処分の内容等の通知
イ、処分基準の設定
ウ、不利益処分の理由の提示
エ、参加人の関与
オ、文書閲覧権
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- 四つ
- 五つ
問15
行政不服審査法に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 「不服申立て」に関する法律の定めは、行政不服審査法しか存在していない。
- 行政不服審査法は、「行政庁の違法な処分その他公権力の行使に当たる行為」に限り不服申立てのみちを開いている。
- 行政不服審査法にいう「処分」には、「公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継統的性質を有するもの」が含まれる。
- 行政不服審査法にいう「処分」には、「不作為」も含まれる。
- 行政不服審査法は、列記主義を採用している。
問16
次のうち、行政不服審査法が明文で要求する審査請求書の記載事項ではないものは、どれか。
- 審査請求人の氏名および年齢または名称ならびに住所
- 審査請求に係る処分
- 審査請求に係る処分がなされた年月日
- 審査請求の趣旨および理由
- 審査請求人が代理人によって審査請求をする場合の代理人の氏名および住所
問17
次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 地方公共団体における事務の手数料に関する事項は、必ず条例で定めなければならない。
- 地方公共団体の長が提出した予算案に対し、議会は、削減または否決することはできるが、増額の修正を議決することはできない。
- 地方公共団体は、予算外の支出が必要な場合には、必ず追加の補正予算を組まなければならない。
- 地方公共団体は、個別に議会の議決を経なければ補助金を交付することができない。
- 地方公共団体の契約は、一般競争入札、随意契約またはせり売りによらなければならない。
問18
次のうち、地方自治法がその設置の根拠法律である行政委員会はどれか。
- 選挙管理委員会
- 教育委員会
- 公安委員会
- 収用委員会
- 人事委員会または公平委員会
問19
地方自治法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 自治事務については、関与は必要最小限のものとするとともに、普通地方公共団体の自主性と自立性に配慮しなければならないが、法定受託事務については、関与の必要最小限の原則だけが適用される。
- 自治事務については、助言または勧告、資料の提出要求、是正の要求の関与だけが、法定受託事務については、同意、許可・認可または承認、指示、代執行の関与だけが許される。
- 普通地方公共団体は、その事務を処理するに際し、法律または都道府県の条例に根拠があれば、国または都道府県の関与を受けることとなる。
- 普通地方公共団体に対する関与については、その種類により、行政手続法に定める聴聞を経る処分の手続または弁明の機会を経る処分の手続が準用される。
- 国は、普通地方公共団体が自治事務として処理している事務と同一内容の事務であっても、法令の定めるところにより国の事務として直轄的に処理することができるが、この場合、原則として当該普通地方公共団体に対し通知をしなければならない。
問20
広域連合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
- 広域連合は、市区町村から構成される「市区町村広域連合」と、都道府県と国の地方出先機関から構成される「都道府県広域連合」の二種類がある。
- 広域連合は、構成団体間において処理しようとする事務がすべて同一種類の事務である必要はなく、この点は複合的一部事務組合と同様である。
- 広域連合は、構成団体に対して広域連合の規約の変更を要請することができ、また広域計画を策定し、その実施について構成団体に勧告することもできる。
- 広域連合には構成団体の住民による直接請求の制度があるほか、長および議会議員の選出についても、住民の直接選挙が可能とされている。
- 国または都道府県は、その権限や事務を、直接広域連合に委任することができ、また、広域連合側から権限や事務の委任を要請することもできる。
問27
意思表示に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 使者が本人の意思を第三者に表示する場合、その意思表示に錯誤があったか否かは、使者を基準に判断する。
- 詐欺および強迫による意思表示は、心裡留保、虚偽表示および錯誤と同様に、表示に対応する内心的効果意思の欠缺する意思表示である。
- 動機の錯誤は、表示意思と表示との不一致を表意者が知らない場合である。
- 本人が強迫を受けて代理権を授与した場合には、代理人が強迫を受けていないときでも、本人は代理権授与行為を取り消すことができる。
- 心裡留保は、表意者が内心的効果意思と表示とが一致しないことを知っている場合であるが、錯誤と虚偽表示はその不一致を知らない場合である。
問28
占有権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 土地の所有者が自己所有地を他人に賃貸して土地を引き渡した場合、土地の占有権は賃借人に移転するから、所有者は土地の占有権を失う。
- 動産の質権者が占有を奪われた場合、占有回収の訴えによって質物を取り戻すことができるほか、質権に基づく物権的請求権によっても質物を取り戻すことができる。
- だまされて任意に自己所有の動産を他人に引き渡した者は、占有回収の訴えを提起してその動産を取り戻すことができる。
- 土地賃借人である被相続人が死亡した場合、その相続人は、賃借地を現実に支配しなくても賃借人の死亡により当然に賃借地の占有権を取得する。
- Aが横浜のB倉庫に置いてある商品をCに売却し、B倉庫の経営会社に対して以後はCのために商品を保管するように通知した場合、B倉庫会社がこれを承諾したときに占有権はAからCに移転する。
問29
民法上の請負契約に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 特約がないかぎり、請負人は自ら仕事を完成する義務を負うから、下請負人に仕事を委託することはできない。
- 注文者は、仕事完成までの間は、損害賠償をすれば、何らの理由なくして契約を解除することができる。
- 完成した仕事の目的物である建物に瑕疵があって、契約をした目的が達成できない場合には、注文者は契約を解除することができる。
- 完成した仕事の目的物である建物に瑕疵があった場合、注文者は修補か、損害賠償のいずれかを選択して請負人に請求することができるが、両方同時に請求することはできない。
- 最高裁判例によれば、仕事完成までの間に注文者が請負代金の大部分を支払っていた場合でも、請負人が材料全部を供給したときは、完成した仕事の目的物である建物の所有権は請負人に帰属する。
問30
親子に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 夫と他の女性との間に生まれた子を夫婦の嫡出子として出生の届出をした場合、この届出は、嫡出子出生届としては無効であるが、特別養子縁組届としての効力を有する。
- 夫が子の出生後その嫡出性を承認した場合には、夫は、嫡出否認の訴えを提起することはできなくなる。
- 妻が婚姻成立の日から200日後に出産した子は嫡出子と推定されるから、たとえ夫による懐胎が不可能な場合であっても、嫡出否認の訴えによらなければ、夫は親子関係を否定することはできない。
- 未成年者が認知をするには、法定代理人の同意を要する。
- 非嫡出子が認知請求権を放棄する契約をしたときは、父に対して認知の訴えを提起することはできなくなる。
問34改題
株式に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 株式が譲渡されると、株主総会の決議により既に確定している配当請求権も移転することになる。
- 株式の譲渡は投下資本の回収を図る手段であるから、株式の自由譲渡性が認められなければならないため、定款で会社の承諾を要する旨を定めることはできない。
- 会社は、保有する自己株式を消却することはできない。
- 子会社は親会社である株式会社の株式を原則として取得できないが、分割や合併等に関連して例外的に認められる方法により親会社株式を取得した場合、子会社は、相当の時期に当該株式を処分しなければならない。
- 株券発行会社では、株券発行前の株式の譲渡は無効である。
問36
次の文章は、日本国憲法の条文である。これを読み、(A)(B)に当てはまる語(漢字各2字)として正しいものを記入しなさい。
「内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の(A)があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。」
「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の(B)を経ることを必要とする。」
正解:
問37
次に示す行政手続法第10条の条文中の、(A)(B)に入る正しい語(漢字各3字)を記入しなさい。
「行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において(A)等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、(B)の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。」
正解:
問38
次の各文章の枠内(1マス各漢字1字)を埋め、そこにおけるA・B・Cの語(各漢字1字)を用いて、下の行政法の専門用語(漢字4字)を完成させ、解答欄にB・A・Cの語を記入しなさい。
ア、当事者間の法律行為を補充して、その私法上の効果を完成させる行政行為を□Aという。
イ、取消訴訟を提起しても、行政処分の効力、執行等は直ちには停止しない。これを「執行B□□の原則」という。
ウ、機関訴訟、民衆訴訟は、裁判所法にいう「法律上のC□」には当たらない。
専門用語 BAC力
正解:
問40
次の記述中の(A)(B)に、漢字6字以内で、該当する権利を記入しなさい。
甲は、所有者乙から土地を賃借していた。ところが、丙が無断でこの土地の使用を始めた。このような状況で、丙をこの土地から排除するために甲の丙に対して採りうる民法上の手段としては、甲がこの土地の引渡しを受け賃借権につき対抗力を備えている場合には(A)に基づく妨害の排除請求が、未だ引渡しを受けず対抗要件も備えていない場合には(B)により乙の所有権に基づく妨害排除請求権の行使が考えられる。
正解:
一般知識等
[問題44~問題57]
問44
次の文中のA~Dにア~オの語句を選んで入れるとき、適当な組合せは、1から5のうちどれか。
論理と言語はいつのまにか、いろいろな点で意見が合わなくなる。最大の相違点は、論理が、人間的な立場や視点を越えてしまったことであろう。逆に言えば、言語はどうしても発言者の特定の視点や関心から離れることができない。そのいきさつがもっとも見えやすいかたちであらわれるばあいのひとつに、否定表現の問題がある。論理においては、「X」の否定すなわち「非X」をもう一度否定すれば元に戻ってしまうだろう。「非・非X」は「X」にひとしい。が、言語ではいくらか様子がちがってしまう。「可能である」の否定形(A)を、さらに否定してみて、さて(B)は(C)にひとしいか。無論、ちがう。その相違はおもに、判断の経過にある。そこには、はなから「可能である」と割り切っていることと、はじめは(D)とすこぶる懐疑的だった精神がいろいろ迷ったあげくにやっと「不可能ではない!」と思い切ることとのちがいがある。言語表現がどうしても私たちの人生そのものと同様の途中の経過抜きでは意味を造形し得ないのに対して、論理は無時間的な、すべてを同時に見とおす(いわば《認識論的な神》の視点からの)ものの見かたをめざしているようである。(出典 佐藤信夫『レトリック認識』)
ア、不可能ではない
イ、不可能だろう…
ウ、可能である
エ、可能であろう
オ、不可能である
A | B | C | D | |
1 | オ | イ | ウ | エ |
2 | オ | ア | エ | イ |
3 | ア | オ | ウ | エ |
4 | オ | イ | ア | エ |
5 | オ | ア | ウ | イ |
問45
次の文章の(ア)から(ク)には「既知の世界」か「未知の世界」のいずれかが入る。「既知の世界」が入る空欄の組合せとして正しいものは、1から5のうちどれか。
「取材」とは、この世の出来事を自分なりに知ろうとすることである。それは、(ア)を(イ)にすることだ。あるいは「ひとつの世界」を発見することだといってもいい。ところで、「取材」とは、ふたつの「世界」のかかわりあいである。ふたつの世界とは、取材者、すなわち自分の「世界」と、その自分がかかわろうとしている「世界」だ。したがって取材者に第一に要求されるのは、まず自分の「世界」の確立、つまり主体の確立でなければならない。取材に当たっては、つねに客観的でなければならぬ、とよくいわれる。たしかに、何かの事実を調べるに際しては、事実に即して客観的に取材しなければならないであろう。だが、それは主体を没却するということでは、けっしてない。客観的でありうるためには、なによりもまず取材者の主体の確立、そして主体の確認が必要なのである。じっさい、主体の確立がなければ、どうして対象をしっかり見据えることができよう。どうして(ウ)を(エ)へ変えることができよう。(オ)を持たぬ人間が、どうして(カ)に挑戦することができようか。なぜなら、何が(キ)であるか、それを知るためには、まず(ク)の確認が必要だからである。(出典 森本哲郎『「私」のいる文章』より)
1 | (ア) | (ウ) | (エ) | (ク) |
2 | (ア) | (エ) | (カ) | (キ) |
3 | (ア) | (ウ) | (オ) | (ク) |
4 | (イ) | (ウ) | (カ) | (キ) |
5 | (イ) | (エ) | (オ) | (ク) |
問46
次の文章の内容と合わないものは、1から5のうちどれか。
野生生物の価値については従来からさまざまな観点から指摘されてきた。これらは大きく経済的価値と文化的価値にわけることができる。経済的価値としては、動物の肉や毛皮等を売買して金銭を得るような商業的価値があてはまる。また、釣やバードウォッチングなどのレクリエーションの対象としての価値も経済的価値ととらえられる。これは、自然をレクリエーションに開放した場合の入場料やそこへ行くための旅費などが経済効果をうみだすからである。一方、文化的価値としては、捕鯨文化などに見られるような民族習慣を保存するための社会的価値や芸術のモチーフとしての美的価値、自然を理解する教材としての教育的価値などが含まれる。野生生物にはこのような多面的な価値があり、それらが野生生物を保護する根拠と考えられてきた。1992年の地球サミット以降、野生生物は人類の生存基盤としての価値もあると考えられるようになってきた。自然生態系には災害防止や気候緩和、水資源や遺伝子資源の保存などの多くの公益的機能があり、われわれが生活していくうえで、莫大な恩恵をもたらしている。したがって、その生態系を構成する野生生物はわれわれの生活を維持するのに欠かせないのである。(出典 揚妻直樹『野生生物の保護管理と霊長類』)
- 経済的価値は、人間社会のあり方との関連で、ものの売買以外にも、経済活動の分野の拡大に寄与している面などから考えられている。
- 経済的価値は、人が金銭を使うことで自分の社会的経済的余裕の表現となることが、精神的満足とつながることで証明される。
- 文化的価値の一つは、その民族の「対象の把握のパターン、行動のパターン」等が反映されていることで民族固有の行動原理等を理解できる点にある。
- 野生生物は公益的機能があるとして評価されているが、それは人間社会を成り立たせる基盤として重要であることが、根拠となっている。
- 野生生物は、それぞれの民族の文化の働きに従って価値が決定されるが、人類の生存基盤としての自然の価値について考えることにも意味がある。
問47
いわゆる「政治主導」に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
- 日本における政治主導確立のモデルになっているのは、アメリカ合衆国の大統領制であり、議院内閣制を大統領制に切り替えることが主たる目標である。
- 日本の国レベルにおける政治主導の主張は、首長主義をとっている地方自治体の政治運営スタイルに触発されたものである。
- 国会審議の活性化が図られるとともに、党首討論制の導入、政府委員制度の廃止、副大臣・政務官等の設置などの制度改革が行われた。
- 議院内閣制のもとで政治主導の確立をはかるには、内閣の法案提出権を法的に禁止することが必須の課題である。
- 国の行政改革における内閣機能の強化は、それによって行政権がますます強化されることになるから、政治主導の確立に逆行する。
問48
日本の選挙制度の歴史に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 日本で男子普通選挙法が成立したのは1924年のことで、イギリスにならって小選挙区制がとられた。
- 日本で婦人参政権が樹立されたのは1945年のことであるが、それに基づく選挙が実施されたのは日本国憲法施行後の総選挙からである。
- 第二次世界大戦の敗戦後最初に行われた総選挙は、中選挙区制限連記制により比較多数で当選者をきめる方式をとった。
- 1947年5月の地方自治法の施行後に行われた統一地方選挙において、初めて都道府県および市区町村の首長と各議会の議員が選出された。
- 1950年制定の公職選挙法は、従前の衆議院議員選挙法と参議院議員選挙法とを統一し、地方公共団体の議員および長の選挙法制を統合することとなった。
問49
次に掲げるもののうち、国際連合憲章に定める国際連合の主要機関はいくつあるか。
ア、総会
イ、安全保障理事会
ウ、経済社会理事会
エ、国際協力銀行
オ、国際司法裁判所
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- 四つ
- 五つ
問50
日本の社会保障制度の形成に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
- 民間企業の被用者を対象とする健康保険は、日露戦争後に進行しはじめた本格的な工業化に対処するために制定され、明治期の末に施行された。
- 官庁や企業に組織化されていない一般国民を対象とする国民健康保険法は、昭和初年の経済恐慌によって疲弊した都市の自営業者を生活破壊から守ることを主眼として、1938年に制定された。
- 第二次大戦中に民間企業の現業男子を対象とした労働者年令保険が創設され、その後に事務職と女子も加入するように改められて、名称も厚生年金保険となった。
- 1958年には新国民健康保険法が、翌59年には国民年金法が相次いで成立し、東京オリンピックの年(64年)になって「国民皆保険」「国民皆年金」が実現した。
- 社会保障給付水準の一挙引き上げが着手された1973年をもって「福祉元年」と命名されたが、第2次石油危機の勃発した年(79年)に「福祉見直し」の制度改革が始まった。
問51
児童福祉に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 日本は2002年4月時点においては「児童の権利に関する条約」を批准していなかった。
- 保育所は、社会福祉法人等の民間機関が設置・運営することも可能であるが、無認可のものはいっさい禁止されている。
- 保育所の保育料は、ほとんどの市町村において、保護者の所得等の負担能力に関係なく、児童1人当たリ一律の金額で設定されている。
- 市町村の保育の実施に要する費用および市町村の保育所の設備に要する費用については、市町村の自主・自立を重んじて、国は費用負担をしていない。
- 保護者にその児童の虐待、著しい監護の怠りなどがある場合には、児童を里親または保護受託者に委託することが認められる。
問52 改題
国債に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
- 財政法上、国債の発行は「建設国債」に限って認められているが、実際には特例法の制定によって「赤字国債」が発行されてきた。
- 財政法の許容する建設国債の発行は、国会の議決を経ることなく政府が自由に行うことができる。
- 国債は、その円滑な消化のために、日本銀行による引受けが原則とされ、市中消化は例外とされている。
- 地方債と呼ばれるものも、地方公共団体の活動に必要な資金を確保するために国が発行する国債の一種であって、地方公共団体が発行するものではない。
- 国債残高は、徐々に増え、2012(平成24)年度末では、同年度一般会計当初予算における歳入予算額の2倍に限りなく近い金額となっている。
問53 改題
国および地方公共団体の会計事務に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 各省庁は、その所管する収入をもって、その所管する事務の遂行に必要な支出に直ちに使用することができ、残額を生じた場合にのみ、その残額を国庫に納めればよい。
- 国の決算については、会計検査院の検査がなされるが、地方公共団体は、その決算について必ず公認会計士の監査を受けることが法律により義務づけられている。
- 市町村の公金は、安全性を重視して、原則として日本銀行に預け入れなければならないとされている。
- 都道府県は、金融機関を指定して、公金の収納または支払いの事務を取り扱わせなければならない。
- 地方公共団体も法人であるので、株式会社などと同様の会計処理をすることが法律により義務づけられている。
問54 改題
最近の会計の動向に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- キャッシュ・フロー計算書とは、一会計期間における現金の増加または減少の状況を一定の活動区分に分けて公表するものであり、普通預金等の預金は一切含まれない。
- 連結財務諸表は、支配従属関係にある複数の会社からなる企業集団を単一の組織体とみなして、親会社が企業集団の財政状態および経営成績を結合的に報告するために作成するものである。
- 日本の会計制度は原価主義会計によってきたが、財産状態を正確に反映すべきであるという考え方から、1997年、原則としてすべての企業のすべての資産を時価により評価する「時価会計」に転換した。
- 「減損会計」とは、金銭債権について貸倒れが懸念される場合に、その懸念される度合いだけ損失を計上する会計処理をいう。
- 「税効果会計」とは、「税務会計」と同じ意味であって、法人税の課税所得を算定するための会計のことである。
問55
GDP(国内総生産)に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- GDPは、市場において取引された財やサービス(フロー)の総量と株等の金融資産や土地等の実物資産(ストック)の総量を金額的に合計したものである。
- GDP統計においては、家事や育児等の家庭内無償労働は、それを担った者が同じ時間、別のところで働いていたならば得たであろう所得の額をもって推計される。
- 工場の建物や機械等、生産に使用された固定資本が生産の過程で減耗した分(固定資産減耗分)を、GDPから差し引いたものを実質GDPという。
- 労働や機械が完全に利用されたとするならば得られるGDPを潜在GDPといい、GDP統計値との差異をGDPデフレーターという。
- 日本やアメリカのように国内の経済規模が大きい国にあっては、GDPとGNI(国民総所得)の差はさほど大きくはない。
問56 改題
個人情報保護に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
- 行政機関個人情報保護法では、プライバシーという包括的・拡張的な概念に代えて、個人情報というより限定的・正確な概念を用いて、個人情報の保護を図っている。
- 行政機関個人情報保護法では、行政機関の保有管理する個人情報のみならず、独立行政法人が保有管理する個人情報にも適用される。
- 個人情報保護法では、電子計算機により処理される個人情報についてのみ適用され、手書きの個人情報には適用されない。
- 行政機関個人情報保護法では、地方公共団体が保有する個人情報ファイルのみならず、民間事業者のうち、体系的に整理された個人情報を一定期間、5000件以上保有している場合にも規制を加えている。
- 行政機関は、個人情報について、本人の同意があるとき、又は本人に提供するときを除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。
問57
電子署名・認証業務に関する法律で導入が定められた電子署名方式の代表例に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
- 送信者の秘密鍵で署名された電子文書は、送信者の公開鍵によってそれを解錠する受信者と送信者の間で通信の秘密を保証する。
- 送信者の公開鍵で署名された電子文書は、送信者の秘密鍵によってそれを解錠する受信者と送信者の間に通信の秘密を保証する。
- 送信者の公開鍵で署名された電子文書は、送信者の秘密鍵によってそれを解錠する受信者に対し、送信者がなりすましでないことを保証する。
- 送信者の秘密鍵で署名された電子文書は、送信者の公開鍵によってそれを解錠する受信者に対し、当該電子文書の真正性を保証する。
- 送信者の公開鍵で署名された電子文書は、送信者の秘密鍵によってそれを解錠する受信者にとって、当該電子文書の真正性を保証する。
問58
下の環境汚染物質に関する文章A~Dと次の環境汚染物質(a)~(d)との組合せとして、妥当なものはどれか。
(a)PCB、(b)ノニルフェニール、(C)窒素酸化物、(d)カドミウム
A、絶縁油などに用いられ、1968年には食用油に混入してカネミ油症事件を起こした。すでに製造は禁止されているが、現在も未処理のまま残っているものが多く、問題となっている。
B、工業用洗剤の原料として使われてきたが、魚類をメス化する内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の作用があることが環境省の調査で報告された。
C、主に物の燃焼にともなって発生し、酸性雨の原因となる。またこの物質が太陽光線の照射を受けることで、いわゆる光化学スモッグの原因となる光化学オキシダントが生成される。
D、鉱山からの廃水に含まれていたこの物質がイタイイタイ病の原因となった。現在もなお農用地における汚染が問題となっている。
A | B | C | D | |
1 | (a) | (b) | (c) | (d) |
2 | (b) | (c) | (a) | (d) |
3 | (d) | (c) | (a) | (b) |
4 | (d) | (b) | (c) | (a) |
5 | (a) | (b) | (d) | (c) |
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