民事訴訟法

第3編 上訴


第一章 控訴(第281条~第310条の2)

(控訴をすることができる判決等)
第二百八十一条 控訴は、地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所の終局判決に対してすることができる。ただし、終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、この限りでない。
 第十一条第二項及び第三項の規定は、前項の合意について準用する。

(訴訟費用の負担の裁判に対する控訴の制限)
第二百八十二条 訴訟費用の負担の裁判に対しては、独立して控訴をすることができない。

(控訴裁判所の判断を受ける裁判)
第二百八十三条 終局判決前の裁判は、控訴裁判所の判断を受ける。ただし、不服を申し立てることができない裁判及び抗告により不服を申し立てることができる裁判は、この限りでない。

(控訴権の放棄)
第二百八十四条 控訴をする権利は、放棄することができる。

(控訴期間)
第二百八十五条 控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。

(控訴提起の方式)
第二百八十六条 控訴の提起は、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。
 控訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
 当事者及び法定代理人
 第一審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨

(第一審裁判所による控訴の却下)
第二百八十七条 控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、第一審裁判所は、決定で、控訴を却下しなければならない。
 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(裁判長の控訴状審査権)
第二百八十八条 第百三十七条の規定は、控訴状が第二百八十六条第二項の規定に違反する場合及び民事訴訟費用等に関する法律 の規定に従い控訴の提起の手数料を納付しない場合について準用する。

(控訴状の送達)
第二百八十九条 控訴状は、被控訴人に送達しなければならない。
 第百三十七条の規定は、控訴状の送達をすることができない場合(控訴状の送達に必要な費用を予納しない場合を含む。)について準用する。

(口頭弁論を経ない控訴の却下)
第二百九十条 控訴が不適法でその不備を補正することができないときは、控訴裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、控訴を却下することができる。

(呼出費用の予納がない場合の控訴の却下)
第二百九十一条 控訴裁判所は、民事訴訟費用等に関する法律 の規定に従い当事者に対する期日の呼出しに必要な費用の予納を相当の期間を定めて控訴人に命じた場合において、その予納がないときは、決定で、控訴を却下することができる。
 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(控訴の取下げ)
第二百九十二条 控訴は、控訴審の終局判決があるまで、取り下げることができる。
 第二百六十一条第三項、第二百六十二条第一項及び第二百六十三条の規定は、控訴の取下げについて準用する。

(附帯控訴)
第二百九十三条 被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる。
 附帯控訴は、控訴の取下げがあったとき、又は不適法として控訴の却下があったときは、その効力を失う。ただし、控訴の要件を備えるものは、独立した控訴とみなす。
 附帯控訴については、控訴に関する規定による。ただし、附帯控訴の提起は、附帯控訴状を控訴裁判所に提出してすることができる。

(第一審判決についての仮執行の宣言)
第二百九十四条 控訴裁判所は、第一審判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行の宣言をすることができる。

(仮執行に関する裁判に対する不服申立て)
第二百九十五条 仮執行に関する控訴審の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。ただし、前条の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(口頭弁論の範囲等)
第二百九十六条 口頭弁論は、当事者が第一審判決の変更を求める限度においてのみ、これをする。
 当事者は、第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない。

(第一審の訴訟手続の規定の準用)
第二百九十七条 前編第一章から第七章までの規定は、特別の定めがある場合を除き、控訴審の訴訟手続について準用する。ただし、第二百六十九条の規定は、この限りでない。

(第一審の訴訟行為の効力等)
第二百九十八条 第一審においてした訴訟行為は、控訴審においてもその効力を有する。
 第百六十七条の規定は、第一審において準備的口頭弁論を終了し、又は弁論準備手続を終結した事件につき控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について、第百七十八条の規定は、第一審において書面による準備手続を終結した事件につき同条の陳述又は確認がされた場合において控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。

(第一審の管轄違いの主張の制限)
第二百九十九条 控訴審においては、当事者は、第一審裁判所が管轄権を有しないことを主張することができない。ただし、専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)については、この限りでない。
 前項の第一審裁判所が第六条第一項各号に定める裁判所である場合において、当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときは、前項ただし書の規定は、適用しない。

(反訴の提起等)
第三百条 控訴審においては、反訴の提起は、相手方の同意がある場合に限り、することができる。
 相手方が異議を述べないで反訴の本案について弁論をしたときは、反訴の提起に同意したものとみなす。
 前二項の規定は、選定者に係る請求の追加について準用する。

(攻撃防御方法の提出等の期間)
第三百一条 裁判長は、当事者の意見を聴いて、攻撃若しくは防御の方法の提出、請求若しくは請求の原因の変更、反訴の提起又は選定者に係る請求の追加をすべき期間を定めることができる。
 前項の規定により定められた期間の経過後に同項に規定する訴訟行為をする当事者は、裁判所に対し、その期間内にこれをすることができなかった理由を説明しなければならない。

(控訴棄却)
第三百二条 控訴裁判所は、第一審判決を相当とするときは、控訴を棄却しなければならない。
 第一審判決がその理由によれば不当である場合においても、他の理由により正当であるときは、控訴を棄却しなければならない。

(控訴権の濫用に対する制裁)
第三百三条 控訴裁判所は、前条第一項の規定により控訴を棄却する場合において、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは、控訴人に対し、控訴の提起の手数料として納付すべき金額の十倍以下の金銭の納付を命ずることができる。
 前項の規定による裁判は、判決の主文に掲げなければならない。
 第一項の規定による裁判は、本案判決を変更する判決の言渡しにより、その効力を失う。
 上告裁判所は、上告を棄却する場合においても、第一項の規定による裁判を変更することができる。
 第百八十九条の規定は、第一項の規定による裁判について準用する。

(第一審判決の取消し及び変更の範囲)
第三百四条 第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる。

(第一審判決が不当な場合の取消し)
第三百五条 控訴裁判所は、第一審判決を不当とするときは、これを取り消さなければならない。

(第一審の判決の手続が違法な場合の取消し)
第三百六条 第一審の判決の手続が法律に違反したときは、控訴裁判所は、第一審判決を取り消さなければならない。

(事件の差戻し)
第三百七条 控訴裁判所は、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでない。

第三百八条 前条本文に規定する場合のほか、控訴裁判所が第一審判決を取り消す場合において、事件につき更に弁論をする必要があるときは、これを第一審裁判所に差し戻すことができる。
 第一審裁判所における訴訟手続が法律に違反したことを理由として事件を差し戻したときは、その訴訟手続は、これによって取り消されたものとみなす。

(第一審の管轄違いを理由とする移送)
第三百九条 控訴裁判所は、事件が管轄違いであることを理由として第一審判決を取り消すときは、判決で、事件を管轄裁判所に移送しなければならない。

(控訴審の判決における仮執行の宣言)
第三百十条 控訴裁判所は、金銭の支払の請求(第二百五十九条第二項の請求を除く。)に関する判決については、申立てがあるときは、不必要と認める場合を除き、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、控訴裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。

(特許権等に関する訴えに係る控訴事件における合議体の構成)
第三百十条の二 第六条第一項各号に定める裁判所が第一審としてした特許権等に関する訴えについての終局判決に対する控訴が提起された東京高等裁判所においては、当該控訴に係る事件について、五人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。ただし、第二十条の二第一項の規定により移送された訴訟に係る訴えについての終局判決に対する控訴に係る事件については、この限りでない。

第一章 控訴

第二章 上告(第382条~第396条)

(上告裁判所)
第三百十一条 上告は、高等裁判所が第二審又は第一審としてした終局判決に対しては最高裁判所に、地方裁判所が第二審としてした終局判決に対しては高等裁判所にすることができる。
 第二百八十一条第一項ただし書の場合には、地方裁判所の判決に対しては最高裁判所に、簡易裁判所の判決に対しては高等裁判所に、直ちに上告をすることができる。

(上告の理由)
第三百十二条 上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
 上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
二の 日本の裁判所の管轄権の専属に関する規定に違反したこと。
 専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
 口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六 判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。
 高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。

(控訴の規定の準用)
第三百十三条 前章の規定は、特別の定めがある場合を除き、上告及び上告審の訴訟手続について準用する。

(上告提起の方式等)
第三百十四条 上告の提起は、上告状を原裁判所に提出してしなければならない。
 前条において準用する第二百八十八条及び第二百八十九条第二項の規定による裁判長の職権は、原裁判所の裁判長が行う。

(上告の理由の記載)
第三百十五条 上告状に上告の理由の記載がないときは、上告人は、最高裁判所規則で定める期間内に、上告理由書を原裁判所に提出しなければならない。
 上告の理由は、最高裁判所規則で定める方式により記載しなければならない。

(原裁判所による上告の却下)
第三百十六条 次の各号に該当することが明らかであるときは、原裁判所は、決定で、上告を却下しなければならない。
 上告が不適法でその不備を補正することができないとき。
 前条第一項の規定に違反して上告理由書を提出せず、又は上告の理由の記載が同条第二項の規定に違反しているとき。
 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(上告裁判所による上告の却下等)
第三百十七条 前条第一項各号に掲げる場合には、上告裁判所は、決定で、上告を却下することができる。
 上告裁判所である最高裁判所は、上告の理由が明らかに第三百十二条第一項及び第二項に規定する事由に該当しない場合には、決定で、上告を棄却することができる。

(上告受理の申立て)
第三百十八条 上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる。
 前項の申立て(以下「上告受理の申立て」という。)においては、第三百十二条第一項及び第二項に規定する事由を理由とすることができない。
 第一項の場合において、最高裁判所は、上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができる。
 第一項の決定があった場合には、上告があったものとみなす。この場合においては、第三百二十条の規定の適用については、上告受理の申立ての理由中前項の規定により排除されたもの以外のものを上告の理由とみなす。
 第三百十三条から第三百十五条まで及び第三百十六条第一項の規定は、上告受理の申立てについて準用する。

(口頭弁論を経ない上告の棄却)
第三百十九条 上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却することができる。

(調査の範囲)
第三百二十条 上告裁判所は、上告の理由に基づき、不服の申立てがあった限度においてのみ調査をする。

(原判決の確定した事実の拘束)
第三百二十一条 原判決において適法に確定した事実は、上告裁判所を拘束する。
 第三百十一条第二項の規定による上告があった場合には、上告裁判所は、原判決における事実の確定が法律に違反したことを理由として、その判決を破棄することができない。

(職権調査事項についての適用除外)
第三百二十二条 前二条の規定は、裁判所が職権で調査すべき事項には、適用しない。

(仮執行の宣言)
第三百二十三条 上告裁判所は、原判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行の宣言をすることができる。

(最高裁判所への移送)
第三百二十四条 上告裁判所である高等裁判所は、最高裁判所規則で定める事由があるときは、決定で、事件を最高裁判所に移送しなければならない。

(破棄差戻し等)
第三百二十五条 第三百十二条第一項又は第二項に規定する事由があるときは、上告裁判所は、原判決を破棄し、次条の場合を除き、事件を原裁判所に差し戻し、又はこれと同等の他の裁判所に移送しなければならない。高等裁判所が上告裁判所である場合において、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときも、同様とする。
 上告裁判所である最高裁判所は、第三百十二条第一項又は第二項に規定する事由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原判決を破棄し、次条の場合を除き、事件を原裁判所に差し戻し、又はこれと同等の他の裁判所に移送することができる。
 前二項の規定により差戻し又は移送を受けた裁判所は、新たな口頭弁論に基づき裁判をしなければならない。この場合において、上告裁判所が破棄の理由とした事実上及び法律上の判断は、差戻し又は移送を受けた裁判所を拘束する。
 原判決に関与した裁判官は、前項の裁判に関与することができない。

(破棄自判)
第三百二十六条 次に掲げる場合には、上告裁判所は、事件について裁判をしなければならない。
 確定した事実について憲法その他の法令の適用を誤ったことを理由として判決を破棄する場合において、事件がその事実に基づき裁判をするのに熟するとき。
 事件が裁判所の権限に属しないことを理由として判決を破棄するとき。

(特別上告)
第三百二十七条 高等裁判所が上告審としてした終局判決に対しては、その判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに限り、最高裁判所に更に上告をすることができる。
 前項の上告及びその上告審の訴訟手続には、その性質に反しない限り、第二審又は第一審の終局判決に対する上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定を準用する。この場合において、第三百二十一条第一項中「原判決」とあるのは、「地方裁判所が第二審としてした終局判決(第三百十一条第二項の規定による上告があった場合にあっては、簡易裁判所の終局判決)」と読み替えるものとする。

第二章 上告

第三章 抗告(第328条~第337条)

(抗告をすることができる裁判)
第三百二十八条 口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定又は命令に対しては、抗告をすることができる。
 決定又は命令により裁判をすることができない事項について決定又は命令がされたときは、これに対して抗告をすることができる。

(受命裁判官等の裁判に対する不服申立て)
第三百二十九条 受命裁判官又は受託裁判官の裁判に対して不服がある当事者は、受訴裁判所に異議の申立てをすることができる。ただし、その裁判が受訴裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
 抗告は、前項の申立てについての裁判に対してすることができる。
 最高裁判所又は高等裁判所が受訴裁判所である場合における第一項の規定の適用については、同項ただし書中「受訴裁判所」とあるのは、「地方裁判所」とする。

(再抗告)
第三百三十条 抗告裁判所の決定に対しては、その決定に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること、又は決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときに限り、更に抗告をすることができる。

(控訴又は上告の規定の準用)
第三百三十一条 抗告及び抗告裁判所の訴訟手続には、その性質に反しない限り、第一章の規定を準用する。ただし、前条の抗告及びこれに関する訴訟手続には、前章の規定中第二審又は第一審の終局判決に対する上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定を準用する。

(即時抗告期間)
第三百三十二条 即時抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。

(原裁判所等による更正)
第三百三十三条 原裁判をした裁判所又は裁判長は、抗告を理由があると認めるときは、その裁判を更正しなければならない。

(原裁判の執行停止)
第三百三十四条 抗告は、即時抗告に限り、執行停止の効力を有する。
 抗告裁判所又は原裁判をした裁判所若しくは裁判官は、抗告について決定があるまで、原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができる。

(口頭弁論に代わる審尋)
第三百三十五条 抗告裁判所は、抗告について口頭弁論をしない場合には、抗告人その他の利害関係人を審尋することができる。

(特別抗告)
第三百三十六条 地方裁判所及び簡易裁判所の決定及び命令で不服を申し立てることができないもの並びに高等裁判所の決定及び命令に対しては、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
 前項の抗告は、裁判の告知を受けた日から五日の不変期間内にしなければならない。
 第一項の抗告及びこれに関する訴訟手続には、その性質に反しない限り、第三百二十七条第一項の上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定並びに第三百三十四条第二項の規定を準用する。

(許可抗告)
第三百三十七条 高等裁判所の決定及び命令(第三百三十条の抗告及び次項の申立てについての決定及び命令を除く。)に対しては、前条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その裁判が地方裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
 前項の高等裁判所は、同項の裁判について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、決定で、抗告を許可しなければならない。
 前項の申立てにおいては、前条第一項に規定する事由を理由とすることはできない。
 第二項の規定による許可があった場合には、第一項の抗告があったものとみなす。
 最高裁判所は、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原裁判を破棄することができる。
 第三百十三条、第三百十五条及び前条第二項の規定は第二項の申立てについて、第三百十八条第三項の規定は第二項の規定による許可をする場合について、同条第四項後段及び前条第三項の規定は第二項の規定による許可があった場合について準用する。

第三章 抗告

第四編 再審(第338条~第349条)

(再審の事由)
第三百三十八条 次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。
 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
 判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと。
 刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。
 判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと。
 証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと。
 判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと。
 判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。
 不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。
 前項第四号から第七号までに掲げる事由がある場合においては、罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。
 控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができない。

第三百三十九条 判決の基本となる裁判について前条第一項に規定する事由がある場合(同項第四号から第七号までに掲げる事由がある場合にあっては、同条第二項に規定する場合に限る。)には、その裁判に対し独立した不服申立ての方法を定めているときにおいても、その事由を判決に対する再審の理由とすることができる。

(管轄裁判所)
第三百四十条 再審の訴えは、不服の申立てに係る判決をした裁判所の管轄に専属する。
 審級を異にする裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは、上級の裁判所が併せて管轄する。

(再審の訴訟手続)
第三百四十一条 再審の訴訟手続には、その性質に反しない限り、各審級における訴訟手続に関する規定を準用する。

(再審期間)
第三百四十二条 再審の訴えは、当事者が判決の確定した後再審の事由を知った日から三十日の不変期間内に提起しなければならない。
 判決が確定した日(再審の事由が判決の確定した後に生じた場合にあっては、その事由が発生した日)から五年を経過したときは、再審の訴えを提起することができない。
 前二項の規定は、第三百三十八条第一項第三号に掲げる事由のうち代理権を欠いたこと及び同項第十号に掲げる事由を理由とする再審の訴えには、適用しない。

(再審の訴状の記載事項)
第三百四十三条 再審の訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
 当事者及び法定代理人
 不服の申立てに係る判決の表示及びその判決に対して再審を求める旨
 不服の理由

(不服の理由の変更)
第三百四十四条 再審の訴えを提起した当事者は、不服の理由を変更することができる。

(再審の訴えの却下等)
第三百四十五条 裁判所は、再審の訴えが不適法である場合には、決定で、これを却下しなければならない。
 裁判所は、再審の事由がない場合には、決定で、再審の請求を棄却しなければならない。
 前項の決定が確定したときは、同一の事由を不服の理由として、更に再審の訴えを提起することができない。

(再審開始の決定)
第三百四十六条 裁判所は、再審の事由がある場合には、再審開始の決定をしなければならない。
 裁判所は、前項の決定をする場合には、相手方を審尋しなければならない。

(即時抗告)
第三百四十七条 第三百四十五条第一項及び第二項並びに前条第一項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(本案の審理及び裁判)
第三百四十八条 裁判所は、再審開始の決定が確定した場合には、不服申立ての限度で、本案の審理及び裁判をする。
 裁判所は、前項の場合において、判決を正当とするときは、再審の請求を棄却しなければならない。
 裁判所は、前項の場合を除き、判決を取り消した上、更に裁判をしなければならない。

(決定又は命令に対する再審)
第三百四十九条 即時抗告をもって不服を申し立てることができる決定又は命令で確定したものに対しては、再審の申立てをすることができる。
 第三百三十八条から前条までの規定は、前項の申立てについて準用する。

第四編 再審

第五編 手形訴訟及び小切手訴訟に関する特則 (第350条~第367条)

(手形訴訟の要件)
第三百五十条 手形による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求を目的とする訴えについては、手形訴訟による審理及び裁判を求めることができる。
 手形訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴状に記載してしなければならない。

(反訴の禁止)
第三百五十一条 手形訴訟においては、反訴を提起することができない。

(証拠調べの制限)
第三百五十二条 手形訴訟においては、証拠調べは、書証に限りすることができる。
 文書の提出の命令又は送付の嘱託は、することができない。対照の用に供すべき筆跡又は印影を備える物件の提出の命令又は送付の嘱託についても、同様とする。
 文書の成立の真否又は手形の提示に関する事実については、申立てにより、当事者本人を尋問することができる。
 証拠調べの嘱託は、することができない。第百八十六条の規定による調査の嘱託についても、同様とする。
 前各項の規定は、裁判所が職権で調査すべき事項には、適用しない。

(通常の手続への移行)
第三百五十三条 原告は、口頭弁論の終結に至るまで、被告の承諾を要しないで、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。
 訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
 前項の場合には、裁判所は、直ちに、訴訟が通常の手続に移行した旨を記載した書面を被告に送付しなければならない。ただし、第一項の申述が被告の出頭した期日において口頭でされたものであるときは、その送付をすることを要しない。
 第二項の場合には、手形訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。

(口頭弁論の終結)
第三百五十四条 裁判所は、被告が口頭弁論において原告が主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合には、前条第三項の規定による書面の送付前であっても、口頭弁論を終結することができる。

(口頭弁論を経ない訴えの却下)
第三百五十五条 請求の全部又は一部が手形訴訟による審理及び裁判をすることができないものであるときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えの全部又は一部を却下することができる。
 前項の場合において、原告が判決書の送達を受けた日から二週間以内に同項の請求について通常の手続により訴えを提起したときは、第百四十七条の規定の適用については、その訴えの提起は、前の訴えの提起の時にしたものとみなす。

(控訴の禁止)
第三百五十六条 手形訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。ただし、前条第一項の判決を除き、訴えを却下した判決に対しては、この限りでない。

(異議の申立て)
第三百五十七条 手形訴訟の終局判決に対しては、訴えを却下した判決を除き、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、その期間前に申し立てた異議の効力を妨げない。

(異議申立権の放棄)
第三百五十八条 異議を申し立てる権利は、その申立て前に限り、放棄することができる。

(口頭弁論を経ない異議の却下)
第三百五十九条 異議が不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、異議を却下することができる。

(異議の取下げ)
第三百六十条 異議は、通常の手続による第一審の終局判決があるまで、取り下げることができる。
 異議の取下げは、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
 第二百六十一条第三項から第五項まで、第二百六十二条第一項及び第二百六十三条の規定は、異議の取下げについて準用する。

(異議後の手続)
第三百六十一条 適法な異議があったときは、訴訟は、口頭弁論の終結前の程度に復する。この場合においては、通常の手続によりその審理及び裁判をする。

(異議後の判決)
第三百六十二条 前条の規定によってすべき判決が手形訴訟の判決と符合するときは、裁判所は、手形訴訟の判決を認可しなければならない。ただし、手形訴訟の判決の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。
 前項の規定により手形訴訟の判決を認可する場合を除き、前条の規定によってすべき判決においては、手形訴訟の判決を取り消さなければならない。

(異議後の判決における訴訟費用)
第三百六十三条 異議を却下し、又は手形訴訟においてした訴訟費用の負担の裁判を認可する場合には、裁判所は、異議の申立てがあった後の訴訟費用の負担について裁判をしなければならない。
 第二百五十八条第四項の規定は、手形訴訟の判決に対し適法な異議の申立てがあった場合について準用する。

(事件の差戻し)
第三百六十四条 控訴裁判所は、異議を不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでない。

(訴え提起前の和解の手続から手形訴訟への移行)
第三百六十五条 第二百七十五条第二項後段の規定により提起があったものとみなされる訴えについては、手形訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、同項前段の申立ての際にしなければならない。

(督促手続から手形訴訟への移行)
第三百六十六条 第三百九十五条又は第三百九十八条第一項(第四百二条第二項において準用する場合を含む。)の規定により提起があったものとみなされる訴えについては、手形訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、支払督促の申立ての際にしなければならない。
 第三百九十一条第一項の規定による仮執行の宣言があったときは、前項の申述は、なかったものとみなす。

(小切手訴訟)
第三百六十七条 小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求を目的とする訴えについては、小切手訴訟による審理及び裁判を求めることができる。
 第三百五十条第二項及び第三百五十一条から前条までの規定は、小切手訴訟に関して準用する。

第五編 手形訴訟及び小切手訴訟に関する特則

第六編 少額訴訟に関する特則 (第368条~第381条)

(少額訴訟の要件等)
第三百六十八条 簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
 少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
 前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。

(反訴の禁止)
第三百六十九条 少額訴訟においては、反訴を提起することができない。

(一期日審理の原則)
第三百七十条 少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。
 当事者は、前項の期日前又はその期日において、すべての攻撃又は防御の方法を提出しなければならない。ただし、口頭弁論が続行されたときは、この限りでない。

(証拠調べの制限)
第三百七十一条 証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。

(証人等の尋問)
第三百七十二条 証人の尋問は、宣誓をさせないですることができる。
 証人又は当事者本人の尋問は、裁判官が相当と認める順序でする。
 裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方と証人とが音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、証人を尋問することができる。

(通常の手続への移行)
第三百七十三条 被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない。
 訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
 次に掲げる場合には、裁判所は、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければならない。
 第三百六十八条第一項の規定に違反して少額訴訟による審理及び裁判を求めたとき。
 第三百六十八条第三項の規定によってすべき届出を相当の期間を定めて命じた場合において、その届出がないとき。
 公示送達によらなければ被告に対する最初にすべき口頭弁論の期日の呼出しをすることができないとき。
 少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるとき。
 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
 訴訟が通常の手続に移行したときは、少額訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。

(判決の言渡し)
第三百七十四条 判決の言渡しは、相当でないと認める場合を除き、口頭弁論の終結後直ちにする。
 前項の場合には、判決の言渡しは、判決書の原本に基づかないですることができる。この場合においては、第二百五十四条第二項及び第二百五十五条の規定を準用する。

(判決による支払の猶予)
第三百七十五条 裁判所は、請求を認容する判決をする場合において、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、判決の言渡しの日から三年を超えない範囲内において、認容する請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをすることができる。
 前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
 前二項の規定による定めに関する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(仮執行の宣言)
第三百七十六条 請求を認容する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。
 第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。

(控訴の禁止)
第三百七十七条 少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。

(異議)
第三百七十八条 少額訴訟の終局判決に対しては、判決書又は第二百五十四条第二項(第三百七十四条第二項において準用する場合を含む。)の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、その期間前に申し立てた異議の効力を妨げない。
 第三百五十八条から第三百六十条までの規定は、前項の異議について準用する。

(異議後の審理及び裁判)
第三百七十九条 適法な異議があったときは、訴訟は、口頭弁論の終結前の程度に復する。この場合においては、通常の手続によりその審理及び裁判をする。
 第三百六十二条、第三百六十三条、第三百六十九条、第三百七十二条第二項及び第三百七十五条の規定は、前項の審理及び裁判について準用する。

(異議後の判決に対する不服申立て)
第三百八十条 第三百七十八条第二項において準用する第三百五十九条又は前条第一項の規定によってした終局判決に対しては、控訴をすることができない。
 第三百二十七条の規定は、前項の終局判決について準用する。

(過料)
第三百八十一条 少額訴訟による審理及び裁判を求めた者が第三百六十八条第三項の回数について虚偽の届出をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
 第百八十九条の規定は、第一項の規定による過料の裁判について準用する。

第六編 少額訴訟に関する特則

第七編 督促手続

第一章 総則 (第382条~第396条)

(支払督促の要件)
第三百八十二条 金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。

(支払督促の申立て)
第三百八十三条 支払督促の申立ては、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してする。
 次の各号に掲げる請求についての支払督促の申立ては、それぞれ当該各号に定める地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してもすることができる。
 事務所又は営業所を有する者に対する請求でその事務所又は営業所における業務に関するもの
当該事務所又は営業所の所在地
 手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する請求
手形又は小切手の支払地

(訴えに関する規定の準用)
第三百八十四条 支払督促の申立てには、その性質に反しない限り、訴えに関する規定を準用する。

(申立ての却下)
第三百八十五条 支払督促の申立てが第三百八十二条若しくは第三百八十三条の規定に違反するとき、又は申立ての趣旨から請求に理由がないことが明らかなときは、その申立てを却下しなければならない。請求の一部につき支払督促を発することができない場合におけるその一部についても、同様とする。
 前項の規定による処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
 前項の処分に対する異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
 前項の異議の申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(支払督促の発付等)
第三百八十六条 支払督促は、債務者を審尋しないで発する。
 債務者は、支払督促に対し、これを発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に督促異議の申立てをすることができる。

(支払督促の記載事項)
第三百八十七条 支払督促には、次に掲げる事項を記載し、かつ、債務者が支払督促の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは債権者の申立てにより仮執行の宣言をする旨を付記しなければならない。
 第三百八十二条の給付を命ずる旨
 請求の趣旨及び原因
 当事者及び法定代理人

(支払督促の送達)
第三百八十八条 支払督促は、債務者に送達しなければならない。
 支払督促の効力は、債務者に送達された時に生ずる。
 債権者が申し出た場所に債務者の住所、居所、営業所若しくは事務所又は就業場所がないため、支払督促を送達することができないときは、裁判所書記官は、その旨を債権者に通知しなければならない。この場合において、債権者が通知を受けた日から二月の不変期間内にその申出に係る場所以外の送達をすべき場所の申出をしないときは、支払督促の申立てを取り下げたものとみなす。

(支払督促の更正)
第三百八十九条 第七十四条第一項及び第二項の規定は、支払督促について準用する。
 仮執行の宣言後に適法な督促異議の申立てがあったときは、前項において準用する第七十四条第一項の規定による更正の処分に対する異議の申立ては、することができない。

(仮執行の宣言前の督促異議)
第三百九十条 仮執行の宣言前に適法な督促異議の申立てがあったときは、支払督促は、その督促異議の限度で効力を失う。

(仮執行の宣言)
第三百九十一条 債務者が支払督促の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促に手続の費用額を付記して仮執行の宣言をしなければならない。ただし、その宣言前に督促異議の申立てがあったときは、この限りでない。
 仮執行の宣言は、支払督促に記載し、これを当事者に送達しなければならない。ただし、債権者の同意があるときは、当該債権者に対しては、当該記載をした支払督促を送付することをもって、送達に代えることができる。
 第三百八十五条第二項及び第三項の規定は、第一項の申立てを却下する処分及びこれに対する異議の申立てについて準用する。
 前項の異議の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
 第二百六十条及び第三百八十八条第二項の規定は、第一項の仮執行の宣言について準用する。

(期間の徒過による支払督促の失効)
第三百九十二条 債権者が仮執行の宣言の申立てをすることができる時から三十日以内にその申立てをしないときは、支払督促は、その効力を失う。

(仮執行の宣言後の督促異議)
第三百九十三条 仮執行の宣言を付した支払督促の送達を受けた日から二週間の不変期間を経過したときは、債務者は、その支払督促に対し、督促異議の申立てをすることができない。

(督促異議の却下)
第三百九十四条 簡易裁判所は、督促異議を不適法であると認めるときは、督促異議に係る請求が地方裁判所の管轄に属する場合においても、決定で、その督促異議を却下しなければならない。
 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(督促異議の申立てによる訴訟への移行)
第三百九十五条 適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、支払督促の申立ての時に、支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、督促手続の費用は、訴訟費用の一部とする。

(支払督促の効力)
第三百九十六条 仮執行の宣言を付した支払督促に対し督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有する。

第七編 督促手続

第二章 電子情報処理組織による督促手続の特則 (第397条~第402条)

(電子情報処理組織による支払督促の申立て)
第三百九十七条 電子情報処理組織を用いて督促手続を取り扱う裁判所として最高裁判所規則で定める簡易裁判所(以下この章において「指定簡易裁判所」という。)の裁判所書記官に対しては、第三百八十三条の規定による場合のほか、同条に規定する簡易裁判所が別に最高裁判所規則で定める簡易裁判所である場合にも、最高裁判所規則で定めるところにより、電子情報処理組織を用いて支払督促の申立てをすることができる。

第三百九十八条 第百三十二条の十第一項本文の規定により電子情報処理組織を用いてされた支払督促の申立てに係る督促手続における支払督促に対し適法な督促異議の申立てがあったときは、督促異議に係る請求については、その目的の価額に従い、当該支払督促の申立ての時に、第三百八十三条に規定する簡易裁判所で支払督促を発した裁判所書記官の所属するもの若しくは前条の別に最高裁判所規則で定める簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。
 前項の場合において、同項に規定する簡易裁判所又は地方裁判所が二以上あるときは、督促異議に係る請求については、これらの裁判所中に第三百八十三条第一項に規定する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所がある場合にはその裁判所に、その裁判所がない場合には同条第二項第一号に定める地を管轄する簡易裁判所又はその所在地を管轄する地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。
 前項の規定にかかわらず、債権者が、最高裁判所規則で定めるところにより、第一項に規定する簡易裁判所又は地方裁判所のうち、一の簡易裁判所又は地方裁判所を指定したときは、その裁判所に訴えの提起があったものとみなす。

(電子情報処理組織による処分の告知)
第三百九十九条 第百三十二条の十第一項本文の規定により電子情報処理組織を用いてされた支払督促の申立てに係る督促手続に関する指定簡易裁判所の裁判所書記官の処分の告知のうち、当該処分の告知に関するこの法律その他の法令の規定により書面等をもってするものとされているものについては、当該法令の規定にかかわらず、最高裁判所規則で定めるところにより、電子情報処理組織を用いてすることができる。
 第百三十二条の十第二項から第四項までの規定は、前項の規定により指定簡易裁判所の裁判所書記官がする処分の告知について準用する。
 前項において準用する第百三十二条の十第三項の規定にかかわらず、第一項の規定による処分の告知を受けるべき債権者の同意があるときは、当該処分の告知は、裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該処分に係る情報が最高裁判所規則で定めるところにより記録され、かつ、その記録に関する通知が当該債権者に対して発せられた時に、当該債権者に到達したものとみなす。

(電磁的記録による作成等)
第四百条 指定簡易裁判所の裁判所書記官は、第百三十二条の十第一項本文の規定により電子情報処理組織を用いてされた支払督促の申立てに係る督促手続に関し、この法律その他の法令の規定により裁判所書記官が書面等の作成等(作成又は保管をいう。以下この条及び次条第一項において同じ。)をすることとされているものについては、当該法令の規定にかかわらず、書面等の作成等に代えて、最高裁判所規則で定めるところにより、当該書面等に係る電磁的記録の作成等をすることができる。
 第百三十二条の十第二項及び第四項の規定は、前項の規定により指定簡易裁判所の裁判所書記官がする電磁的記録の作成等について準用する。

(電磁的記録に係る訴訟記録の取扱い)
第四百一条 督促手続に係る訴訟記録のうち、第百三十二条の十第一項本文の規定により電子情報処理組織を用いてされた申立て等に係る部分又は前条第一項の規定により電磁的記録の作成等がされた部分(以下この条において「電磁的記録部分」と総称する。)について、第九十一条第一項又は第三項の規定による訴訟記録の閲覧等の請求があったときは、指定簡易裁判所の裁判所書記官は、当該指定簡易裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された電磁的記録部分の内容を書面に出力した上、当該訴訟記録の閲覧等を当該書面をもってするものとする。電磁的記録の作成等に係る書類の送達又は送付も、同様とする。
 第百三十二条の十第一項本文の規定により電子情報処理組織を用いてされた支払督促の申立てに係る督促手続における支払督促に対し適法な督促異議の申立てがあったときは、第三百九十八条の規定により訴えの提起があったものとみなされる裁判所は、電磁的記録部分の内容を書面に出力した上、当該訴訟記録の閲覧等を当該書面をもってするものとする。

(電子情報処理組織による督促手続における所定の方式の書面による支払督促の申立て)
第四百二条 電子情報処理組織(裁判所の使用に係る複数の電子計算機を相互に電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を用いて督促手続を取り扱う裁判所として最高裁判所規則で定める簡易裁判所の裁判所書記官に対しては、第三百八十三条の規定による場合のほか、同条に規定する簡易裁判所が別に最高裁判所規則で定める簡易裁判所である場合にも、最高裁判所規則で定める方式に適合する方式により記載された書面をもって支払督促の申立てをすることができる。
 第三百九十八条の規定は、前項に規定する方式により記載された書面をもってされた支払督促の申立てに係る督促手続における支払督促に対し適法な督促異議の申立てがあったときについて準用する。

第二章 電子情報処理組織による督促手続の特則

第八編 執行停止 (第403条~第405条)

(執行停止の裁判)
第四百三条 次に掲げる場合には、裁判所は、申立てにより、決定で、担保を立てさせて、若しくは立てさせないで強制執行の一時の停止を命じ、又はこれとともに、担保を立てて強制執行の開始若しくは続行をすべき旨を命じ、若しくは担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。ただし、強制執行の開始又は続行をすべき旨の命令は、第三号から第六号までに掲げる場合に限り、することができる。
 第三百二十七条第一項(第三百八十条第二項において準用する場合を含む。次条において同じ。)の上告又は再審の訴えの提起があった場合において、不服の理由として主張した事情が法律上理由があるとみえ、事実上の点につき疎明があり、かつ、執行により償うことができない損害が生ずるおそれがあることにつき疎明があったとき。
 仮執行の宣言を付した判決に対する上告の提起又は上告受理の申立てがあった場合において、原判決の破棄の原因となるべき事情及び執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったとき。
 仮執行の宣言を付した判決に対する控訴の提起又は仮執行の宣言を付した支払督促に対する督促異議の申立て(次号の控訴の提起及び督促異議の申立てを除く。)があった場合において、原判決若しくは支払督促の取消し若しくは変更の原因となるべき事情がないとはいえないこと又は執行により著しい損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったとき。
 手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求について、仮執行の宣言を付した判決に対する控訴の提起又は仮執行の宣言を付した支払督促に対する督促異議の申立てがあった場合において、原判決又は支払督促の取消し又は変更の原因となるべき事情につき疎明があったとき。
 仮執行の宣言を付した手形訴訟若しくは小切手訴訟の判決に対する異議の申立て又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決に対する異議の申立てがあった場合において、原判決の取消し又は変更の原因となるべき事情につき疎明があったとき。
六 第百十七条第一項の訴えの提起があった場合において、変更のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点につき疎明があったとき。
 前項に規定する申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(原裁判所による裁判)
第四百四条 第三百二十七条第一項の上告の提起、仮執行の宣言を付した判決に対する上告の提起若しくは上告受理の申立て又は仮執行の宣言を付した判決に対する控訴の提起があった場合において、訴訟記録が原裁判所に存するときは、その裁判所が、前条第一項に規定する申立てについての裁判をする。
 前項の規定は、仮執行の宣言を付した支払督促に対する督促異議の申立てがあった場合について準用する。

(担保の提供)
第四百五条 この編の規定により担保を立てる場合において、供託をするには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。
 第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。

第八編 執行停止

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