会社法もくじ

会社法/第423条~第430条


第11節 役員等の損害賠償責任

(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
第四百二十三条 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。
3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(指名委員会等設置会社においては、当該取引が指名委員会等設置会社と取締役との間の取引又は指名委員会等設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)
4 前項の規定は、第三百五十六条第一項第二号又は第三号に掲げる場合において、同項の取締役(監査等委員であるものを除く。)が当該取引につき監査等委員会の承認を受けたときは、適用しない。
(株式会社に対する損害賠償責任の免除)
第四百二十四条 前条第一項の責任は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
(責任の一部免除)
第四百二十五条 前条の規定にかかわらず、第四百二十三条第一項の責任は、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、賠償の責任を負う額から次に掲げる額の合計額(第四百二十七条第一項において「最低責任限度額」という。)を控除して得た額を限度として、株主総会(株式会社に最終完全親会社等(第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等をいう。以下この節において同じ。)がある場合において、当該責任が特定責任(第八百四十七条の三第四項に規定する特定責任をいう。以下この節において同じ。)であるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の株主総会。以下この条において同じ。)の決議によって免除することができる。
一 当該役員等がその在職中に株式会社から職務執行の対価として受け、又は受けるべき財産上の利益の一年間当たりの額に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額に、次のイからハまでに掲げる役員等の区分に応じ、当該イからハまでに定める数を乗じて得た額
イ 代表取締役又は代表執行役 六
ロ 代表取締役以外の取締役(業務執行取締役等であるものに限る。)又は代表執行役以外の執行役 四
ハ 取締役(イ及びロに掲げるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人 二
二 当該役員等が当該株式会社の新株予約権を引き受けた場合(第二百三十八条第三項各号に掲げる場合に限る。)における当該新株予約権に関する財産上の利益に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額
2 前項の場合には、取締役(株式会社に最終完全親会社等がある場合において、同項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の取締役)は、同項の株主総会において次に掲げる事項を開示しなければならない。
一 責任の原因となった事実及び賠償の責任を負う額
二 前項の規定により免除することができる額の限度及びその算定の根拠
三 責任を免除すべき理由及び免除額
3 監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社においては、取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)は、第四百二十三条第一項の責任の免除(取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任の免除に限る。)に関する議案を株主総会に提出するには、次の各号に掲げる株式会社の区分に応じ、当該各号に定める者の同意を得なければならない。
一 監査役設置会社 監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、各監査役)
二 監査等委員会設置会社 各監査等委員
三 指名委員会等設置会社 各監査委員
4 第一項の決議があった場合において、株式会社が当該決議後に同項の役員等に対し退職慰労金その他の法務省令で定める財産上の利益を与えるときは、株主総会の承認を受けなければならない。当該役員等が同項第二号の新株予約権を当該決議後に行使し、又は譲渡するときも同様とする。
5 第一項の決議があった場合において、当該役員等が前項の新株予約権を表示する新株予約権証券を所持するときは、当該役員等は、遅滞なく、当該新株予約権証券を株式会社に対し預託しなければならない。この場合において、当該役員等は、同項の譲渡について同項の承認を受けた後でなければ、当該新株予約権証券の返還を求めることができない。
(取締役等による免除に関する定款の定め)
第四百二十六条 第四百二十四条の規定にかかわらず、監査役設置会社(取締役が二人以上ある場合に限る。)、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社は、第四百二十三条第一項の責任について、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、前条第一項の規定により免除することができる額を限度として取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって免除することができる旨を定款で定めることができる。
2 前条第三項の規定は、定款を変更して前項の規定による定款の定め(取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任を免除することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を株主総会に提出する場合、同項の規定による定款の定めに基づく責任の免除(取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)及び執行役の責任の免除に限る。)についての取締役の同意を得る場合及び当該責任の免除に関する議案を取締役会に提出する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)」とあるのは、「取締役」と読み替えるものとする。
3 第一項の規定による定款の定めに基づいて役員等の責任を免除する旨の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)を行ったときは、取締役は、遅滞なく、前条第二項各号に掲げる事項及び責任を免除することに異議がある場合には一定の期間内に当該異議を述べるべき旨を公告し、又は株主に通知しなければならない。ただし、当該期間は、一箇月を下ることができない。
4 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「公告し、又は株主に通知し」とあるのは、「株主に通知し」とする。
5 株式会社に最終完全親会社等がある場合において、第三項の規定による公告又は通知(特定責任の免除に係るものに限る。)がされたときは、当該最終完全親会社等の取締役は、遅滞なく、前条第二項各号に掲げる事項及び責任を免除することに異議がある場合には一定の期間内に当該異議を述べるべき旨を公告し、又は株主に通知しなければならない。ただし、当該期間は、一箇月を下ることができない。
6 公開会社でない最終完全親会社等における前項の規定の適用については、同項中「公告し、又は株主に通知し」とあるのは、「株主に通知し」とする。
7 総株主(第三項の責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が同項の期間内に同項の異議を述べたとき(株式会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定による定款の定めに基づき免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該株式会社の総株主(第三項の責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は当該最終完全親会社等の総株主(第三項の責任を負う役員等であるものを除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が第三項又は第五項の期間内に当該各項の異議を述べたとき)は、株式会社は、第一項の規定による定款の定めに基づく免除をしてはならない。
8 前条第四項及び第五項の規定は、第一項の規定による定款の定めに基づき責任を免除した場合について準用する。
(責任限定契約)
第四百二十七条 第四百二十四条の規定にかかわらず、株式会社は、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人(以下この条及び第九百十一条第三項第二十五号において「非業務執行取締役等」という。)の第四百二十三条第一項の責任について、当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨を定款で定めることができる。
2 前項の契約を締結した非業務執行取締役等が当該株式会社の業務執行取締役等に就任したときは、当該契約は、将来に向かってその効力を失う。
3 第四百二十五条第三項の規定は、定款を変更して第一項の規定による定款の定め(同項に規定する取締役(監査等委員又は監査委員であるものを除く。)と契約を締結することができる旨の定めに限る。)を設ける議案を株主総会に提出する場合について準用する。この場合において、同条第三項中「取締役(これらの会社に最終完全親会社等がある場合において、第一項の規定により免除しようとする責任が特定責任であるときにあっては、当該会社及び当該最終完全親会社等の取締役)」とあるのは、「取締役」と読み替えるものとする。
4 第一項の契約を締結した株式会社が、当該契約の相手方である非業務執行取締役等が任務を怠ったことにより損害を受けたことを知ったときは、その後最初に招集される株主総会(当該株式会社に最終完全親会社等がある場合において、当該損害が特定責任に係るものであるときにあっては、当該株式会社及び当該最終完全親会社等の株主総会)において次に掲げる事項を開示しなければならない。
一 第四百二十五条第二項第一号及び第二号に掲げる事項
二 当該契約の内容及び当該契約を締結した理由
三 第四百二十三条第一項の損害のうち、当該非業務執行取締役等が賠償する責任を負わないとされた額
5 第四百二十五条第四項及び第五項の規定は、非業務執行取締役等が第一項の契約によって同項に規定する限度を超える部分について損害を賠償する責任を負わないとされた場合について準用する。
(取締役が自己のためにした取引に関する特則)
第四百二十八条 第三百五十六条第一項第二号(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引(自己のためにした取引に限る。)をした取締役又は執行役の第四百二十三条第一項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない。
2 前三条の規定は、前項の責任については、適用しない。
(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
第四百二十九条 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。
2 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない。
一 取締役及び執行役 次に掲げる行為
イ 株式、新株予約権、社債若しくは新株予約権付社債を引き受ける者の募集をする際に通知しなければならない重要な事項についての虚偽の通知又は当該募集のための当該株式会社の事業その他の事項に関する説明に用いた資料についての虚偽の記載若しくは記録
ロ 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
ハ 虚偽の登記
ニ 虚偽の公告(第四百四十条第三項に規定する措置を含む。)
二 会計参与 計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに会計参与報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
三 監査役、監査等委員及び監査委員 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
四 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
(役員等の連帯責任)
第四百三十条 役員等が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、他の役員等も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。

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